戻る?
その日から宜野座は後輩の仲村が作っていたサーターアンダギーを再現しようと修行していた。
西田センというパティシエ崩れの中年男の調理部の担任から指導を受けることになった。
西田セン「お前がうちの部に戻りたいつってるから又吉も仲村もびっくりしてたな。なんかあったのか?」
何かあったのか?と問われても特に何も無い。
懐かしくなったからと今更とても言えない。
宜野座「いえ。特に………。仲村の作るサーターアンダギーを食べて感動したので」
それは確かな事実だ。
西田セン「へえ。本部1のパティシエになるって俺も昔はよく言ってたしな………」
サーターアンダギーの一つも作れんのか!と若き日の西田センも父に雷を落とされていたらしい。
宜野座は自分のスマホのメモ帳を開く。
残念ながら仲村の作るサーターアンダギーのレシピの材料は把握できなかった。
分かることはたった一つ。
それは…………。
宜野座「仲村のサーターアンダギーの材料はバターじゃないことです」
西田センは不思議そうな顔になる。
西田セン「言ってみろ。宜野座」
宜野座「バターではなく植物油を使ってました」
宜野座はバターではなく植物油を使ってサーターアンダギーを作った。
仲村『うちのおばーが作るサーターアンダギーは新鮮な卵と油を使ってるんです』
揚げたてほやほやのサーターアンダギーを西田センに食べさせる。
カリッとした食感のサーターアンダギーを食べた西田センは感激する。
まさかこれ程喜んでもらえるとは宜野座自身も思いもよらなかった。
西田セン「素人のくせにここまで上手いもんを作れるってすげえな、お前」
宜野座「いえ。まさか………。ありがとうございます」
(サーターアンダギーは揚げたてが一番美味しいんですよ。宜野座先輩)
仲村の言葉を思い出す宜野座。
その頃、仲村は自室に引き籠っていた。
サーターアンダギーの形をしたクッションに顔を埋める。
机にはテディベアも置いてある。
仲村「マジありえん。又吉先輩、ジーマミー豆腐がスイーツだとか………」
落ち込んでいる仲村の声を遮るかのようにドアの向こうから調理部の先輩である又吉の声が辺りに満ちる。
又吉「仲村さんっ!いるんなら返事してっ!」
いないふりをするのもいい加減疲れた。
仲村は取り敢えず応答する。
仲村「又吉先輩!なにかあったんですか?!」
又吉「宜野座が調理部に戻るかもしんない!」
宜野座先輩が調理部に復帰する?
希望的観測かもしれないが仲村は少しだけ胸を躍らせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます