毎月300字小説企画まとめ

白瀬るか

違和感

「ねぇ、死期が近い人は自分の手に違和感を持つ、って話知ってる?」

「何それ」

「ネットで見たんだけど、死期が近い人って自分の手が自分のものじゃないように感じるんだって」

 妻は天然な性格で、こんな都市伝説じみた話もすぐ信じてしまう。おまけにそそっかしく、いい大人なのによくぶつかったり転んだりするので目が離せない。

「最近、私も自分の手が前と違うような気がするの。もしかして、死期が近いのかしら」

「馬鹿なこと言うな。縁起でもない」

 本当に縁起でもない。ホームから落ち電車に轢かれバラバラになった妻を繋ぎ合わせ、足りない部分は他の人間から奪い補って、やっと生き返らせたばかりなのに、そんなこと言わないでほしい。

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