高校二年生の主人公の少年は、七月初旬に山にほど近い高校へ転校してきた。
そして、クラスメイトに誘われて入った謎調査同好会で、十年前に失踪した生徒が校舎に残した十四枚の手紙を探すという調査を手伝ううちに、「何か」に巻き込まれていく。
苦みの強い青春✕サスペンスミステリー
手紙の謎、その内容。
序盤は小さな謎ときがテンポよく配置され、情報の出し方がとてもうまい。
浮かび上がる、手紙の中に閉じ込められた十年前の青春と、謎を解明しながら進む現在の青春。
現在の青春の中心は、主人公と、やたらとプールに浸かっている高三の先輩の、……ブロマンスと呼ぶにはどこか不穏さのある感情。
何かを飲み込んでつかえてるような息苦しさがある。
その不穏さの象徴が、プール、サイダー、雨といった水滴。とかく青春ものでは「キラキラ」した象徴となるが、本作では、肌にまとわりつく湿度として感じる。
理不尽な環境に翻弄され、後悔や嫉妬を抱える中で、名前のつけられぬ感情の行き先に、サスペンス展開が重なっていく。
十四枚の手紙の全容が分かった時の余韻は、たまらなく甘く切ない。
読後、タイトルを見て、言葉のひとつひとつの意味を拾い浸りたい方へ。
夏休み目前の半端な時期、和樹は菰野岩高校に転入する。案内役のクラスメート・柊太の頼みで『調査部』に入部することになった彼は、十年前に菰野岩高校で起きたという三人連続失踪事件について調査することになるのだった。
個性豊かなキャラたちに、読者の興味を引きつつテンポ良く進むストーリー。言葉選びや整った文章、計算された構成からは作者様の筆力が感じられ、序盤から「好きィ……!」と夢中になりながら読みました!
手紙探しが出てきた辺りでさらにワクワクが止まらなくなりました。失踪事件・登場人物の過去・和樹の抱く本人も戸惑いつつの思い・第三者の影……見どころいっぱいですごく引き込まれました。
感情の爆発もあり、ハラハラするシーンもあり、これは上質なエンタメ。つまり、娯楽(他人事)と思って読んでいたんです。真相のシーンまでは……!
本当に、衝撃的すぎて。読みながら崩れ落ちて泣き出したくなりました。もう、登場人物それぞれの気持ちがわかってますから、どんな心情かピタリと理解できてしまって、共鳴してしまって。複数の他者の気持ちを自分の気持ちとして体験してしまって。死ぬかと思った。
そこから最後まで読む間も、読み終わってからも「んぐぉおおおおお」ってしてました。感情が処理しきれなくて、眩暈がするようで、しばらくうずくまってました。情緒がぐちゃぐちゃのめった刺しです。最高の読書体験でした。
琥珀。それは自分を閉じ込めたもの。キラキラした宝物かもしれないし、冷たく凍ったものかもしれない。開けられる日を待つタイムカプセルで、異なる運命を交差させる掛詞なのかもしれない。
読めて良かったです。素晴らしい作品をありがとうございました!
【レビューコンテスト応募】
青春ミステリーとして丁寧に編み込まれた一作。
物語のはじめは、さらりとした夏のプールの冷たさと、どこかエロティックさを感じる出会い。
失踪事件の謎をとくべく、十四通の手紙を探してそのメッセージの意図を探る中で、少しずつ謎の糸がほどけていきます。
豊かな感情表現と繊細なタッチで描かれるため、謎に対する好奇心が刺激されると共に、見えない恐怖や青春の爽やかな甘みも楽しめます。
特に主人公・和樹と茜の関係は、物語で度々登場するラムネのようです。
甘さと喉を通り抜ける爽やかさ、炭酸のシュワシュワと弾ける刺激。
この関係に名前をつけるとしたら何になるのだろう?
あなたも、この、ねっとりとした感情のプールに飛び込んでみてください。
一気に最後まで読み切ることができます。
これは、十代の彼等が大人になるため。
そして、10年前の夏の日に立ち止まったままでいた、ひとりの大人が、次の夏へ進むための物語だ。
10年前に失踪した少女が残した手紙を中心に、少年達は、まるで宝探しでもする様に謎解きの夏を駆け巡る。
14通の手紙を繋ぎ合わせた時、彼らは何を知り、何に気が付つくのか。
いくつも散りばめられた謎を解き明かすとき、衝撃の事実を目の当たりにする彼等は、一体どうやって青春の一頁を閉じるのか。
この物語には、夏の暑さ、虫の声、山から吹き抜ける風、そしてプールの匂いが一緒について回るのだが、それがとても心地良く、読者の自分も物語の中に入り込んだ気分になる。
あなたも彼等と一緒に、この夏の謎を駆け抜けてみませんか。
とても丁寧に編み上げられたミステリーですので、あまり詳しくは語れません。
けれど素敵な読後感は約束できます。
物語のはじまりは、ごく普通の夏。その中に少しずつ滲む違和感と気配が、読み進めるたびに重さを増していきます。まるで澄んだ水の底に、誰にも見えない何かが沈んでいるような気配。
この物語の魅力は、謎だけを追わせないところだと思います。誰かの言葉、誰かの沈黙、笑い声や戸惑いすら、すべてが伏線のような気さえしてしまう展開。繊細で、それでいてときおり大胆な描写。
こんなの、読む手が止まりませんよね。
そうして訪れたラスト、息を呑むとはこのことだと実感しました。
何かを失ったような、でもどこかで救われたような奇妙な感情。
悲しいとか、切ないとか、怖いとか、そういう単語だけではとても言い表せません。ただひとつ言えるのは、この物語はたしかに「青春」を描いていて、喪失した「何か」を抱え、それでも進んでいく若者の物語なのだということ。
この度は素敵な物語をありがとうございます。
まずキャラが濃いです! ガチムチな河童を想像して笑いました。
さらには陽キャな友人の恋、学校のマドンナ的女性の真実の姿などなど、高校生感満載で楽しめます。
私のイチオシは茜さん!(ごめんね主人公)
でもこれミステリーなんですよ。
わちゃわちゃした青春から一転、不穏な影……。
人物を明確に想起させる筆致と、豊かな情景描写。そして開示する情報のコントロール。
筆力の裏付けがあるので安心して物語を追うことができます。
高校生が高校生なりにあがき、傷つく。前を向く。
大人は大人の責任と無責任と人生とを背負う。
そんなところがきちんと描かれていて、読みごたえのある物語でした。
「琥珀の水面」。
その熱く溶け落ち、閉じ込められた心の意味を受け取ってみてください。