第7話 裂け目からの眼差し
車両はゆっくりと闇の奥へと滑り込んでいった。
片桐修太は乗客たちの視線を避けながら、車内の異様な空気に耐えていた。
「終点へ向かいます。」
スピーカーが再び低く響く。
終点とはどこなのか——。
答えを求めたくても、誰も話さない。
乗客たちはただ、薄い皮膚のような顔を歪めながらじっと片桐を見つめる。
その時、列車が突然揺れた。
カタン——カタン——。
車輪が軋み、何かを踏み潰す音がする。
片桐は咄嗟に座席にしがみつく。
すると、窓の向こうに“何か”がいた。
地下トンネルの壁際に、無数の人影が並んでいる。
しかし、よく見るとそれらの顔はすべて、微妙に同じものへと収束している。
片桐は息を呑んだ。
全員の顔が、ゆっくりと彼のものに変わっていく。
「俺は……ここから出られるのか……?」
喉が凍りつく。
終点とは何なのか。
それとも、この列車は終点に向かっているのではなく、乗った者の顔を奪いながら、延々と地下を彷徨っているのではないか——。
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片桐修太は、窓の外に広がる異形の群れを睨みつけた。
彼らの顔はゆっくりと変容し、時間が経つにつれて片桐自身の顔へと収束していく。
「……こんなの、ありえない……。」
額に冷たい汗が滲んだ。
列車の車輪は未だにカタン、カタンと軋む音を響かせ、静寂の中で確実に進んでいた。
しかし、どこへ向かっているのかは分からない。
その時、片桐は乗客たちの様子に異変を感じた。
彼らの首が、ゆっくりと車窓の外へ向いていく。
その動きは不自然で、まるで何かに引かれているかのようだった。
片桐も、恐る恐る目を向ける。
そこに見えたのは、レールの上に倒れ込んだ人影だった。
無数の死体のようなものが、線路の上に並べられている。
しかし、それは死体ではなかった。
それらは微かに動き、囁くような声を発している。
「……次は……誰だ……?」
片桐は絶望に囚われた。
この列車は終点へ向かっているのではなく——**“犠牲者を増やしながら走り続けている”**のだ。
次の犠牲者は、片桐なのか?
列車は止まるのか、それとも彼も線路へと取り込まれるのか——。
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