第31話 新たな事件、そしてカラオケでの災難
UFOとの遭遇、そして「鎧」計画の完全阻止を経て、鬼塚は一時的な平穏を取り戻していた。しかし、彼の規格外な日常に、休息は許されない。ある日の夜、高宮警視から緊急の連絡が入った。
「鬼塚、君に協力してもらいたい事件がある。今度は、音楽業界が絡んでいる」
高宮警視の言葉に、鬼塚は眉をひそめた。音楽業界と彼の悪態がどう結びつくのか、想像がつかなかった。
「とある有名プロデューサーが、突然失踪しました。現場には争った形跡があり、誘拐の可能性が高い」
高宮警視の説明に、鬼塚の顔は険しくなる。ただの誘拐事件なら、彼に回ってくるはずがない。
「そのプロデューサーは、最近、UFOの周波数と酷似した音波を使った、画期的な音楽システムを開発していたようです」
高宮警視の言葉に、鬼塚の脳裏にあのUFOから語りかけられたメッセージが蘇る。まさか、またあの手の連中が裏で糸を引いているのか。
「チッ、またろくでもねぇことになりやがったな!」
鬼塚は舌打ちし、高宮警視と共に捜査へと向かった。
カラオケボックスの騒動
捜査を進める中、失踪したプロデューサーが最後に目撃された場所が、都内の大型カラオケボックスであることが判明した。鬼塚と高宮警視は、情報収集のため、そのカラオケボックスへと向かった。
店内は、週末の夜ということもあり、多くの客で賑わっていた。様々な歌声が漏れ聞こえる中、鬼塚は、プロデューサーが使っていたという部屋の前で立ち止まった。
「あのプロデューサーは、ここで何を企んでやがったんだ?」
鬼塚が毒づくと、高宮警視は冷静に答えた。
「彼は、このカラオケボックスのシステムを使って、新たな音楽の実験を行っていたようです」
その時、隣の部屋から、ひどく音痴な歌声が聞こえてきた。鬼塚は思わず顔をしかめる。その歌声は、中島みゆきの名曲「空と君のあいだに」だった。しかし、あまりにも酷い歌声で、原曲の良さが完全に損なわれていた。
「チッ、下手くそにもほどがあるだろ、このクソ音痴!」
鬼塚は苛立ちを募らせながら、その部屋に目をやった。すると、その部屋のドアが開き、中から出てきたのは、いかにもプロデューサー然とした、見るからに鼻持ちならない男だった。男は、鬼塚の存在に気づくと、ニヤリと笑った。
「おい、そこの君。私の歌声に文句でもあるのかね?私は、この業界では知られた存在なんだがねぇ」
男は、鬼塚を小馬鹿にするような視線を送った。鬼塚の怒りが、頂点に達した。UFOの謎、そしてプロデューサーの失踪、そして目の前の男の傲慢さ。すべてが彼の神経を逆撫でする。
「てめぇみたいな、クソ音痴が偉そうにすんじゃねぇぞ、コラァ!中島みゆきに謝れ、ボケ!」
鬼塚は怒鳴り散らした。男は、鬼塚の悪態に顔を真っ赤にして激昂した。
「な、なんだと!私の歌声が音痴だと!?この私に向かって!」
男が叫びながら、鬼塚に詰め寄ってくる。彼の顔には、憤怒の表情が浮かんでいた。しかし、鬼塚の顔には、一切の躊躇もない。
「空と君のあいだにを歌ってたら音痴と言われアッパーカット、こんなことを言わせるお前が悪いんだよ、このクソ野郎!」
鬼塚はそう言い放つと、男の顎に、渾身のアッパーカットを叩き込んだ!
隠された秘密、そして音波兵器の脅威
男は、呻き声を上げながら、天井を仰ぐように倒れ込んだ。カラオケボックス内は、一瞬にして静まり返り、人々が鬼塚と倒れた男を呆然と見つめていた。高宮警視が駆けつけ、鬼塚の行動に呆れたように頭を抱える。
「鬼塚!またですか!?」
「うるせぇ、タコ警視!こいつが怪しいんだよ!」
鬼塚は、倒れた男の懐から、何かを取り出した。それは、UFOの周波数と酷似した音波を発する、小型の装置だった。
「これは……!」
高宮警視が驚愕に声を上げる。倒れた男は、失踪したプロデューサーのライバル会社の幹部だった。彼は、UFOの音波技術を悪用し、プロデューサーの音楽システムを乗っ取ろうとしていたのだ。そして、その音波は、対象の神経系に直接作用し、思考能力を低下させる効果を持つ。プロデューサーの失踪も、彼の仕業だったのだ。
「テメェみたいな、人の才能を妬んで、こんな卑怯な手を使うクソ野郎は、許さねぇ!」
鬼塚は、男の顔を掴み、さらに問い詰める。男は怯えながら、すべてを吐き出した。彼らは、UFOの音波技術を兵器転用し、国際テロ組織の残党と組んで、世界中の情報システムを混乱させる計画を企んでいたのだ。
事件は解決したが、鬼塚の心には新たな疑問が残った。UFOの技術は、もはやテロ組織だけでなく、裏社会の様々な勢力に流出している。そして、その技術は、音楽という形で人々の生活に忍び寄り、静かに社会を蝕もうとしているのだ。
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