第18話 東京地下決戦:苛立ちと「鎧」の真実
東京の地下に広がる廃駅。その薄暗く湿った通路に、鬼塚の足音が響く。高宮警視率いる警視庁の特殊部隊も、彼に少し遅れて厳重な警戒態勢で突入していた。しかし、鬼塚の目的はただ一つ、スネークを捕まえ、**「鎧」**計画の全貌を暴くことだ。
「チッ、どこにいやがる、あのクソ野郎!」
鬼塚は舌打ちしながら、廃墟と化したホームを駆け抜ける。彼の耳には、遠くから聞こえる特殊部隊の交戦音が届いていた。
「鬼塚!単独行動は危険です!合流してください!」
無線から主任の焦った声が聞こえる。鬼塚は無線機を掴み、吐き捨てた。
「うるせぇ、タコ!てめぇらはてめぇらの仕事してりゃいいんだよ!俺は俺のやり方でやる!」
無線を切り、鬼塚はさらに奥へと進む。廃駅の地下は、予想以上に広大で、複雑な構造になっていた。錆びたレールが張り巡らされ、朽ちた列車が闇の中に横たわっている。まるで、忘れ去られた過去の残骸が、この「鎧」計画の不気味さを際立たせているようだった。
その時、背後から冷たい声が響いた。
「相変わらず、無鉄砲だな、鬼塚」
振り返ると、そこにいたのは、紛れもないスネークだった。彼は、いつの間にか鬼塚の背後に回り込んでいたのだ。その手には、デザートイーグルが握られている。
「テメェか、クソ野郎!美咲ちゃんを巻き込みやがって!今度こそ逃がさねぇぞ!」
鬼塚は、怒りのままにスネークに飛びかかろうとする。しかし、スネークはそれを冷静にいなし、鬼塚の腹部に回し蹴りを叩き込んだ。鬼塚は呻き、通路の壁に叩きつけられた。
「まだわからんのか、鬼塚。これは、お前のような感情的な人間には理解できない、もっと大きな計画なのだ」
スネークは冷酷な目で鬼塚を見下ろし、銃口を向けた。その時、どこからともなく、不快な高音が響き渡った。
隠された真実と因縁の決着
その音は、まるで脳を直接揺さぶるかのような不快な周波数で、鬼塚の神経を逆撫でする。そして、その音と同時に、廃駅の壁面に設置されたモニターが点灯し、そこに一人の女性の顔が映し出された。
「スネーク、計画は順調ね。もうすぐ、**『鎧』**は完成するわ」
モニターの中の女性は、不敵な笑みを浮かべていた。彼女は、数年前のテロ組織の幹部で、国際指名手配されている人物だった。
「チッ、てめぇらグルだったのか!」
鬼塚は呻きながら立ち上がろうとする。しかし、高音のせいで頭がガンガンと痛み、集中できない。
「イライラするな、ババァ!」
鬼塚は、モニターの女性に向かって叫んだ。スネークは、鬼塚の言葉にわずかに動揺したように見えた。その隙を、鬼塚は見逃さなかった。
鬼塚は、持っていた携帯電話を床に叩きつけた。そして、砕け散った携帯電話の破片の一つを拾い上げ、モニターに向けて投げつけた。破片はモニターに命中し、映像が乱れた。高音も途切れる。
「小賢しい真似を!」
スネークが舌打ちし、銃口を鬼塚に向ける。しかし、鬼塚はすでに体勢を立て直し、スネークへと猛然と突進していた。
「てめぇのルールなんざ、通じねぇんだよ!」
鬼塚は、スネークが銃を構える間もなく、その懐に飛び込んだ。元特殊部隊の傭兵であるスネークの動きは素早い。彼は銃を振り回し、鬼塚の頭を殴りつけようとするが、鬼塚はそれを頭突きで返した。鈍い音が響き、スネークがよろめく。
その隙に、鬼塚はスネークのデザートイーグルを掴み取り、地面に叩きつけた。銃が砕け散る音が、地下の空間に響き渡る。
「終わりだ、スネーク!」
鬼塚は、スネークの顔面に渾身の右ストレートを叩き込んだ。スネークの体が大きく吹き飛び、錆びた線路の上にごろりと転がった。彼は呻き声を上げながらも、その瞳には、敗北を認めた悔しさと、どこか達観したような色が混じっていた。
「……愚かな。これでお前たちに、『鎧』の真実を止めることはできない」
スネークは、最後の力を振り絞ってそう言い放ち、意識を失った。
終わらない戦い
高宮警視と特殊部隊が駆けつけた時には、すべてが終わっていた。スネークは拘束され、モニターの女性との通信も途絶えていた。しかし、「鎧」計画の全貌は、まだ明らかになっていない。
「鬼塚、よくやった」
高宮警視は、複雑な表情で鬼塚に声をかけた。彼の顔には、鬼塚の飛び蹴りの跡が、まだ生々しく残っていた。
「チッ、当たり前だろうが、タコ警視。で、この『鎧』ってのは、一体何なんだ?」
鬼塚の問いに、高宮警視は重い口を開いた。
「まだ全貌はつかめていないが、我々の情報では、『鎧』とは、特定の周波数を使って人々の感情を操作し、社会を混乱させるためのシステムだという。スネークは、そのシステムの最終調整をしようとしていたようだ」
鬼塚は、愕然とした。美咲が持っていた「情報」とは、そのシステムの設計図の一部だったのかもしれない。そして、彼らが利用しようとした高音は、そのシステムの実験だったのだ。
スネークは捕まったが、「鎧」計画の首謀者であるテロ組織の幹部は逃げ延びた。そして、この「鎧」計画が、どこまで進んでいるのかも不明だ。
鬼塚の因縁は、一時的に決着を見たものの、新たな、より大規模な戦いの始まりを予感させていた。彼の「ルールなんて誰が守るかボケ!」という精神は、これからも、彼をこの狂った世界で突き動かすだろう。
この「鎧」計画は、一体何を目的としていたのか?そして、鬼塚と高宮警視の関係は、今後どうなっていくのか?
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