パート43: 王家からの召喚状

 一回戦の圧勝劇は、学園にさらなる衝撃を与えた。

 アランのチームは、ただ個々の能力が高いだけではない。

 どんな状況にも対応できる、底知れない戦術の幅を持っている。

 その事実が、僕たちの評価を不動のものにした。


 僕たちはその後も、順調にトーナメントを勝ち進んでいく。

 二回戦、三回戦と、相手がどんな対策を練ってこようとも、僕の采配の前では無意味だった。

 ヒロインたちも、僕の指示を完璧にこなし、試合を重ねるごとにその連携は洗練されていった。


 そして、ついに準決勝進出を決めた、その日の試合後。

 僕たちが控室に戻ろうとすると、一人の男が僕たちの前に立ちはだかった。

 その男がまとっているのは、王家に仕える近衛騎士の制服だった。


「アラン・フォン・エルフィールド殿、並びにチームの諸君。トーナメントでのご活躍、陛下も大変お喜びです」


 近衛騎士は、丁寧だが有無を言わせない口調で言った。


「つきましては、一度、王城にお越しいただきたい。皆様の卒業後の進路について、陛下が直接お話を伺いたいとのことです」


 そう言って彼が差し出してきたのは、王家の紋章が刻まれた、一通の召喚状だった。

 それは、事実上の命令。

 一貴族である僕たちに、拒否権はない。


「……っ!」


 リナたちが、緊張に息を呑む。

 僕たちの力が、ついに学園という小さな枠を越えて、王家や他の貴族派閥が無視できないレベルに達したということだ。

 彼らは、僕たちを自陣営に引き込もうと、動き出したのだ。


(……面倒なことになってきたな)


 僕は内心でため息をつきながらも、表面上は穏やかな笑みを浮かべて、その召喚状を受け取った。


「謹んで、お受けいたします」


 準決勝の相手は、兄ガイウス。

 そして、その先には、国家レベルの権力争いが待ち受けている。

 僕たちのチームの進路が、新たな、そしてより大きな対立の火種となることを、僕ははっきりと予感していた。

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