パート32: 新たな目標

 学園祭の喧騒が嘘のように過ぎ去り、僕たちのチームには確かな一体感が生まれていた。

 温室での会話も増え、セレスティアとフェンリルの口論も、じゃれ合いの延長のように見える。

 リナも、二人の間でオロオロするのではなく、笑顔でそれを見守れるようになっていた。


(チームビルディングは順調。次のステップに進む時だな)


 僕は、いつものように集まった三人の前で、新たな目標を宣言した。


「次の目標は、一ヶ月後に開催される『学内ランキング戦』での優勝だ」


 学内ランキング戦。

 それは、全生徒が参加し、トーナメント形式で学園の頂点を決める、年に一度のビッグイベント。

 そして、その上位は毎年、兄のガイウスをはじめとするエリート貴族たちが独占している、主流派閥の権威の象徴でもあった。


「ランキング戦……!」

「面白そうだな、それ!」

「わたくしたちの実力を、学園中に示す絶好の機会ですわね」


 三人は、それぞれの形でやる気を見せる。

 その自信に満ちた顔は、頼もしい限りだ。

 だが、僕はあえて彼女たちに冷や水を浴びせた。


「だが、はっきり言っておく。今の君たちでは、絶対に勝てない」


「「「えっ!?」」」


 僕の言葉に、三人は驚きの声を上げる。


「学園祭で、僕たちのチームワークは格段に向上した。だが、それは『日常』レベルでの話だ。一瞬の判断が生死を分ける『実戦』において、君たちの連携はまだ、あまりにも未熟すぎる」


 僕は厳しい口調で続ける。


「このままトーナメントに出ても、一回戦で負けるのがオチだろう。僕のプロデュースするチームが、そんな無様な姿を晒すことは許されない」


 僕の言葉に、三人の顔から笑顔が消え、真剣な表情へと変わる。

 彼女たちも、僕の言わんとすることを理解したのだろう。

 本当の戦いは、ここから始まるのだ。

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