パート27: 最強チームの胎動

 後日。

 僕たちの秘密の拠点である古い温室に、初めて4人のメンバーが顔を揃えた。

 僕、アラン・フォン・エルフィールド。

 僕の最初の最高傑作、リナ。

 孤高の公爵令嬢、セレスティア・フォン・ヴァイス。

 そして、野生児のような獣人、フェンリル。


「今日から、僕たちは正式なチームだ」


 僕が宣言すると、三者三様の反応が返ってきた。

 リナは「はい、マスター!」と嬉しそうに頷き、セレスティアは「仕方ありませんわね」とため息をつき、フェンリルは「よく分かんねーけど、マスターと一緒ならいいぜ!」と笑う。


「まず、それぞれの役割を確認する」


 僕は黒板代わりに使っているガラスに、それぞれの名前を書き出した。


「リナ、君は圧倒的な攻撃力を持つチームの『矛』だ」

「はい!」


「セレスティア、君はあらゆる攻撃を防ぎ、戦場を支配する『盾』だ」

「……当然ですわ」


「そしてフェンリル。君のその身体能力と野性の勘は、誰よりも鋭い『剣』となる」

「けん? カッコいいな、それ!」


 矛、盾、そして剣。

 そして、それらを束ねる頭脳である、僕。

 理論上は、完璧な布陣だ。

 ……まあ、現実はそう甘くないだろうが。


 案の定、ヒロインたちの間には、早くも不協和音の兆しが見えていた。


「あなた、本当に公爵令嬢ですの? 少しは淑女としての嗜みを身につけてはいかが?」

「あ? なんだよお前、偉そうだな!」


 セレスティアがフェンリルの行儀の悪さを注意し、フェンリルがそれに噛みつく。


「セレスティアさん、フェンリルはまだ学園に慣れていないんですから……」

「あなたも甘やかしてはいけませんわ、リナ。このチームの品位が疑われます」


 リナが仲裁に入ろうとするが、セレスティアに一蹴される。

 リナはリナで、僕の隣を陣取るセレスティアを、少しライバル視しているようだった。


(……ふふっ)


 そのギクシャクした光景を見て、僕は思わず笑みをこぼした。

 今はまだバラバラな彼女たちが、これからどうやって一つのチームになっていくのか。

 その過程をプロデュースするのも、また一興だ。


「いいか、君たち。僕たちの目標は、ただ一つ」


 僕は三人の注目を集め、力強く宣言した。


「このチームで、この腐った学園の頂点に立つ。そして、僕たちを笑った全ての人間を、実力で黙らせるんだ」


 僕の言葉に、三人の瞳に同じ色の光が宿った。

 それは、これから始まる伝説への、期待の光。

 最強チームの物語は、今、静かに胎動を始めた。

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