第23話 剣の入手と、お節介な助言


「俺も一緒に行くのは、ダメですか?」


俺の言葉に、ミリネラは全くの動揺を示さなかった。やはり、こちらの考えていることがわかるらしい。


「そうだな。これはモカに与えた試練だが......。アスカ。君にも試練を与えるのも、良いかもしれない」


ミリネラはそう言うと、研究室の方へ歩いて行く。


「こちらへ来い。武器を与えよう」


俺は言われるがままに、ついていく。


けれども、俺は別に武器なんてなくても問題はない。

何故なら、俺にはチートスキルトレジャーがある。

武器なんて何でもいいし、もっというなら素手だとしても、魔物に負けることはないだろう。


最初に手に入れた武器の木の棒は、もうすっかり、部屋のインテリアになっている。

今更、これを使う気もない。


「君はもしかしたら、自分が魔物に負けるわけがないと、思っているかもしれない」


「うっ」


図星を突かれる。けれども、それは事実だ。このチートで負ける相手なんて、この先現れるのか? このままのんびりスローライフできるレベルの能力じゃないか。


「確かに君のスキル、心眼は50の年輪だが、それは攻撃のためのスキルではない」


「あ、それは......!」


言おうとして、踏みとどまる。


そうだ、ミリネラは、俺が心眼のスキルを使ったことしか知らない。


だから、他にも攻撃スキルや他の場所に転送させるスキルなんてのも使えるなんて、全く思っていないんだ。


さすがのミリネラの観察眼でも、そこまではわからないよな。


ところで、ミリネラのこれってスキル、だよな? 確かスキルを使ったら気を纏う? らしいけど、俺にはそれが全く見えていない。


気を見せないとか、そういう技術があるんだろうか。


これがスキルじゃないなんてのは、恐ろしい想像だからやめておこう。


「スキルの年輪は、確かに本人の力と同一視できる。50の年輪の気を纏える君に大怪我をさせたり、ましてや瀕死にさせるなんてことは、普通の魔物には難しい」


研究室の中で、ミリネラは、とあるものを手に取ったらしい。こちらからは背中しか見えない。


「だが、こちらに攻撃手段がなく、相手が雑魚ではなかった場合、君は一方的に攻撃を受け続けるしかなくなる」


だから、スキルトレジャーがあれば問題ないって。


そう言いたいが、まぁ、隠しておいた方が良い、か。さすがにこんなチートを軽々しく言うべきじゃない。


それに、俺は別にすごく見られたいわけでもないしな。


「これを使え。無いよりはマシだ」


そう言って、手渡されたのは、鞘に入った剣だった。


「おお!」


少し嬉しい。剣といえば、ゲームの武器の代名詞だ。


これを入手したってだけで、俄然やる気が出てくる。


「あとは、私から言えるのは、一つだけだ」


ミリネラは、最後に俺に、こう言った。





「最悪な場合は、逃げろ」





その必要は、きっと無いよな。


俺は単純に、そう思った。










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