第18話 俺のスキルは、どうやら特別らしい


ミリネラは驚いている。

ローブで顔は見えないが、珍しく狼狽している。


「どういうことだ? あの気の纏い方から考えるに、おそらく50の年輪に相当する。人が到達できる最高クラスのはずだ」


「よくわからないけど、それってすごいのか?」


50って、ゲームで言うなら50レベルってことか?

言い方からするに五十年の修行が必要とかなんだろうけど、百レベルもあるだろうしなぁ。


むしろ、俺のチートの能力がその程度であることが不服だ。

どうせならレベル100とか1000とか、そんな感じの規格外であって欲しい。


「何を言っている。本当に、何も知らないのだな。いや、それも含めて、異端、なのか」


一人で話ながら、一人で納得している。


「何も知らない俺にもわかるように言ってくれ」


するとミリネラは、一度自らを落ち着かせる。


「少し長くなるぞ」


「短く頼みたい」


「いや、おそらく何も知らない君には、長く話さないといけない」


なら仕方ない。俺は頷いた。


「まずは、この世界のことについてだ。君は、魔物を見たな?」


「ああ、見た」


「しかし、獣もいる」


「ん? どっちも同じじゃないか?」


「魔物と獣は異なる。獣はよく食用とされているが、魔物は食用にはならない。命が尽きれば粒子となり消えるからだ」


ああ、だからこの世界の料理は美味しいのか。きっと魔物じゃない普通の鶏とか牛がいて、それを家畜にしてるんだ。


「と、それは応用の話だ。もっと初歩的な、魔物と獣の違いがある」


「それは?」


「それは同様に、人と獣の違いでもある」


「なんだそれ。その図式だと、人と魔物が同じみたいじゃないか」


「今回の話で言うなら、同じだよ」


「そんな、こと」


「それを踏まえて、再び聞こう。人と獣の違いとは、なんだ? 何をもって、人は人となり、獣と違って存在している?」


俺は考えてみた。人と獣。獣から考えてみると、獣は、本能で生きている。人も本能で生きてるけど、それだけじゃない。


「義務、か?」


「少し近い。しかしまぁ、良しとしよう」


ミリネラは、言い放つ。


「人と獣の違いは、意思だ。噛み砕いて言うなら、本能に抗える何かを持っているかどうかだ」


「意思.....」


「人の言う『自由』という言葉から考えてくれてもいい。人は本当の意味で、自由にはなれない。本当に自由になったら、本能だけで生きる獣になる。だから、人が欲しがる『自由』とは、常に



自らを縛る鎖を、自分で選べる権利だよ」


納得はした。けれども、話が見えない。


「それで、スキルの話はどこいったんだ?」


「ああ、ここまでのことが理解できたなら、端的に説明できる。スキルとは、意思持つ者の力だ。意思持てる者は、その身体自体が、自らのスキル専用の発動回路になっている。そして、その発動には常に反動がある。つまり、50の年輪相当のスキルを発動して、たとえ僅かな発動だとしても、息切れすらしないのは、全くもって、異常なことなんだ」


「そういう、ことか」


俺はわかった。今、納得した。

ここまで、俺は逐一スキルを選んで取得していた。そして、それはすぐに使えなくなっていた。


まるで、一回限りの使い捨てのように。


それは少し、面倒だと思った。

チートスキルをたくさん持てれば、それは最強だ。


でも、この世界でそれは、別に最強でも何でもない。


どんなに強い力でも、確実に反動を受けるなら、どうしても使いにくくなる。


だから、俺はこのスキルに、道すがらチートスキルを拾って使い捨てるようなこのスキルに、感謝しなければならない。


使ってもすぐに捨てれば、俺の身体は、全く負担なく居られるのだから。


これはまさしく、チートスキルだ。


名付けるなら、



チートスキルトレジャー。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る