第10話 皿洗いチートOver Drive
ミリネラから解放されると、モカのところへ向かう。
別れ際に皿洗いを手伝って欲しいと、ミリネラに言われたのだ。
皿洗い。うーん、あまりした事はない。
不孝行息子である。
割ったらどうしようとか。それが高いものだったらとか、悩みは尽きない。
俺が来たことに気づいて、モカは俺に一礼のように頷くが、手伝ってくれとは言わない。
しゃーない、やるか。
何もしないのも、居心地が悪い。
「手伝おうか?」
「いえ、私の言われた仕事なので」
あ、なんか言い方間違ったな。これだとイケすかない感じ。
「えっと。俺もミリネラさんにはお世話になってるから、半分するよ」
「あ、はい。そうですよね。すみません」
するとモカは、台所から退いた。
モカが洗い終えた皿はピカピカである。光を放っている。
それには及ばないかもしれないけど、俺も、頑張ろう。
と、モカが俺の方をじっと見ている。
「どうかした?」
しかし答えは返ってこない。
じっとこちらを見続けている。
「だいじょう.....」
その時、俺は気づいた。
身体が動かない。
声は出るのに。
この状況を、俺は知っている。
ゲームのポップアップウィンドウが、視界の上に現れた。
「どちらのスキルを入手しますか?
→超速皿洗い
→完璧皿洗い」
こういうのにも、発動すんのか。
とりあえず、助かった。
得意では無いと言うか、経験が乏しいからな。粗相をしなくて済む。
えーと、速さか精度かってところかな。
じゃあ無難に、精度で。
「完璧皿洗い」
俺がそう言うと、俺の手は自動で動き出し皿を洗う。
それは職人の技。三十年、いや五十年くらいをその道に費やして棺桶に片足突っ込んでても後悔のない涼やかな顔をした皿洗い職人の顔が、脳裏に浮かんだ。
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