幕間 雷太道士と小玉玄女の仙境バンザイ! ――にゃ!
――
小玉玄女「やっほ~~雷太! 遊びにきたにゃ!!」
雷太「……ああ、これは小玉玄女様……、いつもは熊野の方にいるのに、わざわざここまで?」
小玉玄女「――なんにゃ? 遊びにきちゃ駄目にゃ?」
雷太「い、いえ、そんな事は――」
小玉玄女「で? ……教主様は?」
雷太「ああ、それは……、いつもの公会堂での【説法会】です」
小玉玄女「ああ……、【
雷太はその言葉に苦笑いする。
小玉玄女「相変わらずこの都市の連中は、いい意味で阿呆ばかりにゃ。――昔の殺伐としたモノが少しだけ懐かしいにゃ」
雷太「先代洞主様の策略らしいですねw」
小玉玄女「まあ、教主様は――、なかなかにアイドル気質だからにゃ。まあ、妖怪仙人たちもノセられている事をわかってて、それでもノッている部分もあるが……」
雷太「……まあ、俺は殺伐とした視線をよく感じますが」
小玉玄女「ああ、諦めるにゃ。お前はアイドルのお気に入りだからにゃ。――ファンにとってはまさしく敵だにゃw」
そう言って笑う小玉玄女に、雷太は苦笑いを向けてため息を付いた。
小玉玄女「で、そんなことより、お前に聞きたいことがあったにゃ」
雷太「なんです?」
小玉玄女「お前、この間――、ウチの武神様とやり合ったそうにゃ」
雷太「え、あ……」
小玉玄女「……何回死んだ?」
雷太「いや!! 死んでないです!! ……酷いですよ小玉玄女様!!」
その雷太の返答に、本気で驚く小玉玄女。
小玉玄女「ダニィ?! 本当に一度も死んでないにゃ?! 嘘ついてないにゃ?!」
雷太「……本気で驚かれると、なんか傷つきますね……」
小玉玄女「……、ああ、もしかして、教主様に――【武神様に絶対手を出すな、回避に専念せよ】とか言われたのにゃ?」
雷太「うえ? なんで分かるんですか?!」
小玉玄女「……おそらく、教主様自体も手を出していないにゃ?」
雷太「……正解です」
小玉玄女「まあ、教主様なら――、たしかに、そこまで読むかもにゃ」
雷太は疑問を得て小玉玄女に聞き返す。
雷太「……あの後、特に聞き返さなかったので、そう言われた理由はわかってませんが」
小玉玄女「う~~ん。じゃあ、例えば、あの場にウチがいたらどうなったと思うにゃ?」
雷太「え? 武神様が相手ですし、俺よりかは役に立ったんじゃ?」
小玉玄女「いや、その逆――。大惨事だったにゃ」
雷太「え?」
小玉玄女「……武神様の、【真人としての精神性】は至極単純、そして明快にゃ。日常は皆を慈しむ仁の人――、戦場では全てを鏖殺する戦闘機械――、日常と戦闘で精神性を切り替える、まさしく戦闘ロボットそのものなお方こそ、かの武神――、
雷太「……」
小玉玄女「おそらく――、武神様は決戦装備を纏ってたにゃ? それは、戦闘モードに切り替わると自動的に纏われる――、戦闘モード移行時にすぐに最大戦力を発揮できるように考えられた術式にゃ」
雷太「それじゃ……、あの決戦装備って――。武神様が暴走状態――、要は、自分の意志に反して戦闘モードになった為に自動的に纏われた、と?」
小玉玄女「そうだにゃ。だから、ウチのような、なまじっか強い相手――、伊達に剣神の名を冠していないウチが出てくれば――」
雷太「あ……、それは」
小玉玄女「無論、ウチにもプライドがあるから、そう簡単にヤられるわけにもいかず。――その結果、武神様は
雷太「俺が大丈夫だったのって……」
小玉玄女「うん、ただの障害物を退かすのに、全力攻撃するバカはいないにゃ」
雷太「障害物……」
小玉玄女「うん、だからこそ教主様も手を出さなかったのにゃ。無論、最悪のシナリオに続いた際の、奥の手は持ってただろうが……」
雷太「で、あのお二人――、 武神様を止めた北兲子様と慧仙姑様は……」
小玉玄女「あの二人は武神様にとって日常の象徴……、当然、最大限に暴走は押し留められるにゃ」
雷太「なるほど」
小玉玄女「……まあ、でもあの二人の実力を下に見ることはないにゃ。アレは――、少なくともあの二人でこられると、ウチは速攻で負けるにゃ」
雷太「え?」
小玉玄女「ウチは妖怪としての基本能力を資本に、さらに剣術を極めて剣神の名を得ているが。そのウチよりかの北兲子殿――、本名、佐々木巌流殿は剣術歴が遥かに上だからにゃ」
雷太「……佐々木、巌流? それってどこかで?」
小玉玄女「ああ、かの宮本武蔵の物語に出てくる、佐々木小次郎と同姓同名だにゃ。でも――、北兲子殿のほうが本家だにゃ」
雷太「……ええ!!」
小玉玄女「そこら辺の詳しい話は、まあ――、本人に聞くといいにゃ。――で、妖怪としての能力で彼の力を遥かに上まったとしても、あいつは普通にウチの剣線を先読みしてくるにゃ。そこに連携すればほぼ同じ動きを再現可能な慧仙姑殿が追従してきたら、まさしくウチでは手に負えんにゃ」
雷太「そんな人を毎回敗北させていた、うちの師匠の師匠って――」
小玉玄女「まあ、鵬雲道人様は――、そもそもが戦闘が得意ではあるが、さらに【
雷太「とんでもない人だったんですね……」
小玉玄女「ふふふ……、まあそうだにゃ」
そう言って小玉玄女は意味深な笑顔を雷太に向けた。
◆◇◆
●三大仙境解説:
★
洞主:
主要施設:大宮殿【仙境統括本部】
解説:
日本仙道界における全仙境の統括本部のある大仙境。
物理的に無限に広がる海【無限海】上空に浮かぶ大宮殿であり、その大きさは【龍泉魔嶺府】についで二番目である。
実は三大仙境の中で最も新しく建てられた場所であり、それ以前の神仙同士の諍いがあったのをまとめ上げた天鳳真君その人が、その洞主を務めている。
実際、全仙境一の最新設備、機能をもった大宮殿であり、古風な見た目に反してかなりSF的、未来的な施設となっている。
★
洞主:
主要施設:大城塞【天司夢灯霊城】
解説:
人間が元となった仙人たちが立てた大仙境。現在は人間妖怪の区別なく受け入れているが、かつてはかなり排他的であった。
日本仙道界における軍事を司る要塞都市であり、そこに住まう仙人道士がたも、大抵は剣士を初めとする戦いに関わる者である。
その洞主である八咫司軍車戸天尊は、かの吉備津討羅仙君の同僚であり、智謀の天尊、武力の仙君、と称される。
まあ、なかなかに質実剛健の石頭、に見えてさすがは知将という柔軟な思考も出来てしまう、戦闘においては敵に回したくない人物。
かの鵬雲道人に、一時だけ師匠としてついたことがある、いわば鵬雲道人に【
★
洞主:
主要施設:大都市【龍泉魔嶺府】
解説:
元は神仙に至った【八岐之大蛇】の子孫が建設した妖怪仙人のための大仙境。人口としては最少であるがやたら広大な敷地面積を誇る。
現在は人間も受け入れているが、それでも、その仙人道士の姿のバリエーションがもっとも華やかな大都市である。
周囲の森林は【無限樹海】と呼ばれる、かの【無限海】と同じ法則で成立しており、都市部で生活できない妖怪仙人達はそこで暮らしている、かなり広大な範囲を誇る仙境である。
その洞主は、無論本編ヒロイン暉燐教主であり、洞主としては三大仙境全てを含めて、歴代で最年少を誇っている。
彼女が洞主となる以前は、【八岐之大蛇】の直系である【
【紅鱗龍仙玉女】が洞主であった時代は、なかなかに派閥争いみたいなものが激しかったらしく、その中で立てようとした次代洞主の名前には、かの小玉玄女も含まれていた。
しかし、鵬雲道人の唯一の弟子として名を知られ、半ばアイドル的な見られ方をされていた暉燐教主を、そのまま彼らのアイドルとして擁立したという流れである。
当然、この都市には【泠煌ちゃんファンクラブ総本部】が存在し、その一桁台に【天鳳真君】の名が書かれている。
ようするに、昔の殺伐とした状況が一転、ノリの良い阿呆|(いい意味で)の集団と化したアイドルファンの集いである。
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