気クラゲ
まえとら
気クラゲ
自然環境が激変して久しい。
世界各地には、天に届くほどの巨大な樹が点在している。
その巨樹の中層部の枝には、
風船のような、海月(クラゲ)のような、透明な生き物がぶら下がって実っている。
それが……「気クラゲ」だ。
植物から生まれるこの不思議な生物は、成長すると枝から離れ、空中をふわふわと浮遊しながら、空気をゆっくりと浄化してくれている。
夜になると妖しく発光し、空を漂うその姿は、まるで星々の海をたゆたう夢の生き物のよう。
わずかに生き残った人類は、巨大な樹の上層部に暮らしている。
中層部は気クラゲのおかげで空気の浄化が進み、比較的安全だが、
下層部に降りるには、ゴーグルと一体化した特殊なマスクを装着しなければ、
命を落としてしまう。
さらにその下……深層部の世界は、いまだ謎に包まれている。
人々は、気クラゲにつかまり、空を移動することもできる。
生き延びるためには、気クラゲの身を食すことさえある。
不思議な味がするけれど、大丈夫。
そよ風にカーテンが揺れ、小枝に咲いた小さな花の香りが漂う。
人々は、気クラゲにぶらさがりながら、時の海を流離う。
気クラゲ まえとら @mae10ra
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