第2話 お前は誰だ。俺の名前はショウブだ。

「えっ?」声をだして、私は我に返った。

反撃だ。いくらイケメンでも許せない。

「何よ。さっきまで、よれっとして、

うなだれて1人で座っていたくせに。

朝からひどく疲れてるし。

ひどいブラックで働いているのだろうと

勝手に妄想しながら

勝手に同情していたのに。

なによ。3列シートにデーンと一人で陣取って最低ー。

疲れていてかわいそうと思った私がバカだった。。同情して損した。」

怒った時の私のしゃべりは弾丸だ。

誰も止めることができない。

案の定、そのイケメン男子は

カバンを抱えたまま固まった。

「何か言いかえしたかったら言いなさいよ。」

男子も目が覚めたのか、我に返ったのか、

冷静な顔つきで「お前は誰だ。」

「はあ?私はカノン。そういう君は誰?」

「俺様はショウブだ。お前も異世界から人間界に通勤か?」

「はあ?何いってんの?まだ目が覚めてませんか?ここは人間しか、いませんよ。」

その男子、ショウブは突然私の頭の上に手のひらをがばッとのせた。

「召喚。」

「?」

「?」

「カノン。お前はただの人間か?」

「だからさっきも人間しかいないって、言ったじゃない。」

「そうか。人間か。

俺様はてっきり俺様と同じ、異世界からの通勤者だと思って・・・」

「?と思った私は、ショウブ、なんで私が異世界人だと思ったのよ。」

私はチラリとショウブを見た。

たぶん私の方が3つほど年上だ。

ここは年上の威厳をと、上から目線で話した。

「俺様はさっきお前が言ったように

人間界の俺様の会社はブラック企業だ。

朝は定時9じ出社。夜は残業。会社を出るのは毎日22時過ぎ。家に着くのは0時を回る。」

「それは大変ね。同情するわ。

で、違う。違う。

なぜ私が異世界人だと思ったのって聞きたかったの。」

「そうだった。俺様の家はこの電車の終点車庫の隣だ。異世界への時空の扉がある。

俺様は毎日始発に乗って来る。

朝から疲れている俺様は魔法を使う。」

「ちょっと待って。魔法?」

「そうだ。こっちの人間界では誰も使えないようだが俺様の異世界の国では誰でも使える。

しかし、ここからが問題だ。俺様はまだ若い。人間界では魔法が発動できない。

人間界での修業が必要だ。

だからこの電車も始発の車庫の中だけは俺様の魔法が使える。

だから人間界でのこのブラック企業での仕事。修行で毎日疲れ切っている俺様は魔法で

この3列シートに結界を張り誰も入れないようにしているのさ。

しかし、今日は深く寝すぎたようだ。

結界の線がゆるかったようだ。

お前みたいな人間に容易く入られてしまった。」

「ショウブ、私はお前じゃなくて、カノン。

私の名前はカノンよ。覚えて。」

「あー、カノンだな。」

「それで、今更だけど、まわりの人達に私達のこの会話聞かれてる?」

「カノン。のみこみが悪いな。

さっき言っただろう。この中は俺様の結界内。外からは3人座ってるように見えてるさ。

会話も音も外にはもれない。」

「へえー、やるじゃんショウブ。」

「次は大手町。」アナウンス。

「ショウブ。楽しかった。ここで降りるわ。

席、ちゃんととっていてね。

じゃあ。また明日ね。ヨロシク。」

私は電車から降りた。時間を見る。遅刻する。振り返らずに私は走りだした。

電車内、ショウブが1人つぶやいてる。

『また明日ね。ヨロシク。』か。

あっ。俺様としたことが、人間に話してしまった。修行の時間がこれでまたの伸びるな。

まあいいか。また明日だ。

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