運輸事情
◤ 概要 ◢
この資料は「異能情報生命体仮説」シリーズの世界観を説明するものです。
ご興味がありましたら
同作者の「統合異能捜査局の日々について」をお読みいただければ大変嬉しく思います。
https://kakuyomu.jp/works/16818622176388744296
※ 異能モノなのに全く戦闘しません。異能が存在する社会をリアル重視で描いています。
あらかじめご了承ください。
◤ 交通・輸送体系 ◢
異能共生社会における交通・輸送体系は、21世紀初頭に一般化していた「航空機・自動車・鉄道・船舶」による4本柱のモデルから大きく変質している。
2031年の《異能パンデミック》、さらにその直後に発生した《ケスラーシンドローム》によって地球軌道上の衛星網がほぼ完全に失われたことで、航空輸送と衛星航法に依存していたシステムは機能停止に追い込まれた。
この断絶は単なる交通の停滞にとどまらず、人々の生活範囲や社会的距離感を大きく再編することになった。
◤ 民間航空機の廃止 ◢
民間向け航空輸送は、異能パンデミック初期に発生した「高空域における異能テロ」を契機に全面的に凍結された。異能者による機内構造破壊や操縦妨害の記録は、社会に「空路は最も脆弱な領域」という認識を固定させ、以降は制度的に封印された。
現在、空を飛ぶ輸送手段は行政・軍用の例外機に限られる。これらは構造強化が施され、搭乗者は厳格に身辺調査されることが義務化されている。
市民にとって航空はもはや日常的な交通手段ではなく、稀に高高度機が残す飛行機雲を目撃することが「要人輸送の証拠」としてSNS上で話題になる程度である。
飛行機雲は2140年代の市民にとって一種の伝説的風景と化しており、文学や映像作品にもしばしば引用される。なお、国外旅行経験者は非常に稀な存在である。
◤ 海運の再編 ◢
外洋航行においては、失われた測位衛星の代替としてデジタル化された天文航法と、近代技術としての慣性航法装置が併用される。星図や天体観測を基盤に、内部センサーによる慣性データで補正する方式であり、伝統的航海術と現代工学の融合が進んだ形態といえる。
一方、沿岸や近海輸送では、都市再建計画の一環として設置された電波塔や灯台が測位・安全航行を支援する役割を担っている。これらは単なる航路標識ではなく、現代の「準測位インフラ」として機能し、内航輸送における物流の安定化を支えている。
新東京における港湾都市の中心は蒼梁市であり、物流大手である八洲連ホールディングスが再建資材・生活物資の輸送を統括している。外洋航行船は長距離の定期便として、近海航行船は都市間の補完的流通手段として役割分担されている。
◤ 太平洋ブイネット計画(Pacific Buoy-Net Project) ◢
2127年から進められている異能共生圏国際協調プロジェクト。太平洋上に数十km間隔で通信・測位・気象観測用の無線ブイを格子状に配置し、外洋でも安定したネット接続と航行補助を確保することを目的とする。
各国の海洋観測塔や沿岸網と連携し、衛星不在時代の“海上の神経網”として機能する。2140年時点で計画達成率は62%に到達している。
◤ 地上都市間輸送 ◢
都市間輸送の主幹は鉄道と無人トラック輸送である。
鉄道網は、統合都市交通機構(UTRA)が運営する国家的インフラとして再建され、かつてのJR各社の残存資産を母体に統合された。UTRAは都市間を結ぶ幹線に限定して運行し、地方路線はほぼ廃止・凍結されたが、その分「幹線輸送の信頼性」は大幅に向上した。
とりわけ東京―大阪間の東海道線は、日本最大の幹線として再設計されており、市民輸送専用線1本、物資輸送専用線3本を両方向に敷設し、計8線の大動脈へと拡張されている。
これにより人流と物流が明確に分離され、輸送効率はかつてない水準に達した。他の主要幹線網においても同様に市民輸送と物資輸送は分離され、随時線増・改修が行われている。
全利用は市民IDと紐づいたサクラパス認証に依存し、市民権停止者は利用不可となる。これは交通機関であると同時に社会的選別装置としても作用している。
道路輸送については、自動運転技術を基盤とした無人トラックが主流であり、都市間の主要道路には「測位ビーコン」が設置されている。これらは道路沿いに数十m間隔で配置されている。こうしてトラック隊列輸送や緊急物資輸送の即応性を保証している。
◤ 都市内移動と個人交通 ◢
都市圏内部における個人移動は、電動自転車・電動バイク・電気自動車が標準である。いずれも再生可能エネルギー由来の電力で賄われ、環境負荷は低減している。
都市の階層構造や複雑な連絡デッキを前提に設計されており、自転車やバイクは立体都市に適応した小回りの利く移動手段として普及した。
一方で、夜間移動や治安不安地域では無人タクシーの利用が一般化している。これらは都市監視網と連動し、市民の移動履歴を総合市民記録台帳(CSC)に自動的に記録する仕組みを備えている。
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