第9話 ドキドキ

「なに?」


「きみさ、回復科なのにずいぶん度胸あるなーて思って。他の科の生徒相手に逃げ出さずに逆に逃げさせるなんてなかなかできないよ」


「はは、そりゃどうも。じゃあね」


その場から逃げ出すように立ち去る。ここでこれ以上関わって余計な関係を増やすなんて冗談じゃない。

そういうわけでそそくさと去っていく。


「面白い子見つけちゃったー」


なんて声が聞こえた気がしたが。気のせいだと思おう。


しかし、なんで原作ヒロインのルシア・フェルステリアが俺に接触してきた?


「俺のモブライフ終わらないよな?いや、なにがなんでもしがみついてやる。俺はモブなのだから」


翌日。


昼休みを迎えた。


ここ数日でアッシュとユフィと昼を食べるのが毎日のルーティンとなってきていた。


今日もそうだろうと思ってたんだが。


「やっと見つけたよ、エリオット」


「ん?」


顔を上げるとそこにはリネアがいた。


「お昼どう?私見ての通り友達がいないからさ」


ちなみにいつもの2人は空気を察したようでそそくさと他の奴らと飯を食いに言おうとしていた。


「まぁ、いいけど」


「そうこなくちゃね。さ、いこうよ」


そう言ったときだった。


「私も混ぜてくれないかしら」


新たな声。


目を向けると、今度はルシアがいた。


(ルシアはやばいて)


リネアはモブヒロインだからまだいいとして、ルシアと飯くえば俺はメインストーリーに引き込まれるような気がする。


俺としてはそれは避けたいわけで。


(そうだ、ここはリネアに助けてもらおう)


「俺はいいけどさ。リネアに聞いてよ」


リネアは大人数が苦手だ。


これで俺の評価を下げずにルシアの誘いを断れる、はずだ。


「私の方が早かった。我慢してくれる?」


ないすリネア。


これでメインヒロインの魔の手から逃れる。


「そう、それなら残念ね」


ルシアのほうもあっさりと引き下がる。


我ながら完璧な計画だった。


「ほら、いこうエリオット」


「あ、あぁ」


俺はリネアと共に食堂に向かった。


原作ではあり得なかった光景が目の前に広がってる。


「好きなもの頼んでいいよ。ここは奢るからさ」


俺、ダイヤだからいいんだけど。


でも、口にするのはもちろんやめとくか。それから小物モブを演じるためにもここは素直に奢られておこう。


「好きなものか、リネアが好きなものが好きなものかな」


「かわいいこと言ってくれるじゃない。うれしーかも」


リネアは自分が頼んだものを二倍にした。


リネアのセンスはなかなかよかた。


さすがはクールお姉さん系キャラってとこか。


「そういえば、知ってる?」


「なにが?」


「これから始まる。ランキングお試し期間」


「あー」


原作でもあった期間だ。


この学園のランキング制度ってものを体に教え込むためって意味も込めて授業もなにもない完全なランキングを変動させるための期間が存在する。割と有名な話だ。


「手を組まない?って思ってさ」


「リネアと?」


「そう。エリオットの強さはもう既にわかってる。暴漢相手に殴りかかるなんて大したもの。その度胸を買いたいし、君と組めれば絶対ランキング上がれるって思ったからさ」


「ふむ。乗った」


「即決だね。なにか気になることとかないの?メリットやデメリットとか」


「別に。だってそっちの方が面白そうだからって直感的に思った」


まぁ、他に理由を上げるなら、リネアは俺の隠れ蓑に丁度いいと思った。


極端な話俺が期間中なにかやらかしても、周りはリネアが凄いと思うからって考えたからだ。


それからルシア避けにもなるし。俺たちが手を組んだと伝えれば向こうも手を引くだろうし。


そして俺はメインストーリーと永遠におさらば、ウェルカムマイモブスローストーリー。そういう単純なお話。


「じゃ、よろしく頼むよ。リネアお姉様?」


すっと手を差し出す。


「なに?私をリードしたいとかそう思ってる?」


「いや、別に?」


「なんか、ちょっと生意気だなぁ」


リネアは俺の手を掴むと、グイッと引っ張ってそのまま自分の胸の谷間に押し込んだ。


「えっ?!」


「ふふふ、顔真っ赤にして可愛いね。エリオット」


「ちょ、ちょっと、やばいって。ここ、食堂」


「大丈夫だって、誰も見てないからさ。」


「で、でもぉ……」


「なんてね、意地悪はここまでにしとこう」


リネアは手を話してくれた。


俺は急いで手を抜きとる。


まだ、手にはリネアの体温が残っていた。


(やば……リネアのおっぱいに手を埋めてしまったぞ)


貴重な体験をしてしまった。


正直今すぐに手を舐め回したい衝動に駆られたが、我慢我慢。つーか、いきなりこんなことされて驚かないやつなんていねーし。


てか、このクールお姉様、小悪魔過ぎんだろ。


俺が顔面真っ赤にしながらリネアを見ていると……


「じゃ、私はここらで」


リネアは立ち上がった。


「また会おうね。私の可愛いエリオット?」


「うぅ……//////。うん。また今度」


「ほんと、可愛いよね。好きだよ」


手をヒラヒラと振りながらリネアは立ち去って言った。


うぐぅ、めっちゃ心臓ドキドキするわ。


やばい雑念が混じり始めてきた。


てか、好きとか簡単に言わないで欲しいなぁ。勘違いするだろ!


まぁ、流石にそういう意味じゃないのは分かるけどさぁ。


「このモヤモヤとしたもの吹き飛ばすためにも、ちょっと動くかー」






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