読者が少女を導く物語 ~シェイナの軌跡~

羽羽樹 壱理

第一話:【環巡り《パスシアーズ》】

 遥か古代、空と陸と海が一つだった時代から、時をかたれた広大な世界。

 人々はそれぞれの地で独自の文化と技術、風土に根ざして生きていた。


 分たれたそれぞれの地。


 空に浮かぶ島々、音に満ちた森、静謐な砂の海、匂いを運ぶ風の平野。神の手によって形作られた自然の多様さが、そのまま人々の生き方に反映されている。


 世界は広い。

 その広大にせられ、終わりの指針も決めることなくこの世界を歩き続ける者たちがいる。

環巡りパスシアーズ】と呼ばれる者たちが。


 そしてここにも、世界の広大にせられ、果てなき道を歩み出した者が一人。


【セリノ高地連邦】から始まりの一歩を踏み出そうとする、大地と風のたみとして生まれ落ちた少女が。


 ――【セリノ高地連邦】。緑と風の地。山と段丘に囲まれた高地地帯。

 農耕と風車技術が発達し、「風と共に生きる」ことを哲学とする人々が暮らしている。風を読むすべけた民族。


 少女はそこに、、いた。


 ある日、村人が畑に出てみれば、その広大で美しい平地の畑の真ん中に――その赤子は起き捨てられ、泣き声を上げていた。


 たみは彼女を、「風が連れてきた子」と呼んだ。


 セリノ高地連邦の民は彼女を受け入れた。

 忌避きひ邪険じゃけんを受けることもなく、少女は民の心をほどこしとして、すくすくと育った。


【セリノ高地連邦】には不満などない。

 民はとうとほどこしの心を胸にいだくほどきよい人たちであったし、少女も、生まれ育ったこの大地が大好きであった。


 だが――……。


 次第に、どういった天命なのか……少女は、自分が生まれたその場所の、可能性の無数に、せられるようになっていた。


 出生地が知りたいわけではない、ただ、無数の可能性というあまりの雄大、世界の広さにただ――情熱的な情景ロマンいだいていた。


 風が吹くたび、地平線の向こうへ思いを馳せる。

 世界のあらゆる場所の、風の匂いは、いったい、どのようなものだろうか――?

 夕陽の向こうには、私にどんな情感を与える風景が、広がっているのか。


 どこまでも広い世界。


 少女が意を決するには、時間はかからなかった。


【セリノ高地連邦】の人々、大地に、感謝と祈りをいだいて。

 13歳になった少女は、まだ見ぬ世界を巡る旅の第一歩を、踏み出した。



「行っておいで、シェイナ。旅の幸運を」



 ――私はシェイナ。

【セリノ高地連邦】の風のたみであり、そして、世界のどこまでも広がる未知と道にせられた、【環巡りパスシアーズ】の一人だ。


 風の匂いを嗅いで。


 私は今日も、この世界の広大に、足を踏み出す。







――さて、【物語の始まり】となる地、しばらくの時【環巡りパスシアーズ】としてせいを歩んだ少女の、次の行く先は、いったいどこであろうか?


・機構都市ノルド

巨大な階層都市。歯車と管が張り巡らされ、地熱や風力を動力源とした機械文明が発展している。


心層郷しんそうきょうミルヴェ

心の底の層を見つめることを生きる指針とさだめた、宗教都市。たみは自身の内面を覗くことを生活の重要に置いて暮らしている。


・音の森エリヴァ

森全体が、風や枝葉、動物の動きによって音楽を奏でるとされる聖域。音を記録し、聞き取る文化が根づいており、人々は“聞くこと”に長けている。


・浮空列島ラ=ヴィズ

空に浮かぶ複数の島々からなる、雲上の国々。島々は緩やかに風の流れで移動しており、風路(ふうろ)と呼ばれる空路が定められている。人々は高所の文化に特化し、星や風、気流を読む術を重んじている。


・貴族帝都シンドリス

【貴族】という階級制度が築かれた都市。人々は明確な階級に分けられ暮らし、多くは文化的に生活しているものの、その都市には人間が残酷が垣間見える。


・その他

あなたの想像する大地。




”あなた”の選択を待っています――……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る