寝不足のまま仕事を終えた“私”が馴染みの喫茶店へ行くと、マスターである青年がコーヒーを淹れており、テーブル席でひとりの老人が新聞を読んでいた。とりあえず注文を済ませて“私”は落ち着く……かと思いきや、ラジオから流れ来た殺人事件のニュースが老人を激昂させた。かくて始まるのだ。3人の演者による推理劇が。
注目していただきたいのは構成の妙! ネタバレになるので内容は語れませんが、最初の段落からすでに始まっているのですよ、著者さんの仕掛けが!
そして冒頭から一気に物語は展開していくのですが、外連味たっぷりな三者が三様に言の葉を繰り、細やか且つ濃やかな駆け引きを演じて織り成す起伏! その大きさに目を引きずり込まれてしまいました。これほど短いお話でまったく窮屈さを感じさせない、これもまた構成の妙ですよねぇ。
私はミステリー音痴なので真相に辿り着けませんでしたが、鮮やかな種明かしによって読後はたと膝を打たされましたよ。さて、あなたはどこで真相に気づけますでしょうか?
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)