第2話 これは現実だ


 俺はまだ20代だが有名な植物学の教授だ。


 薬学に長けており、自分で作った新しい植物を使い新たな薬を作ることで多くの病気から患者を救ってきた。

 このまま行けば将来は安泰。現時点でも風呂にできるほどの量。お金を持っている。



 だが…何年経っても津波に対する不安が消えることはなかった。

 実験の名目で津波が来れないほど大きな山の上に住み基本は降りてこない。


 もし何か事情があり都市へと向かう時はヘリコプターに乗ってくることを条件としていた。

 そのせいで多くの人からは嘲笑や侮蔑の視線を向けられることになった。しかしそれでも津波の方が怖かった。



 地震や津波専門家と仲良くなり、地震に関しての知識を得ることにした。

 得た知識を元に安全に暮らせるようにと家を改造する日々。


 だがそれでも不安は絶えなかった。60になればあの大津波が現れる。俺にとっては死のカウントダウンと言っても過言ではなかった。

 予知能力があるなんて言っている超能力者や宗教家等。多くの人を訪ねたが結果は外れ。


 とうとう山を丸々一つ買って大きな要塞にまで改造してみせた。

 その頃には皆私には近寄らなかった。妄想に取り憑かれた哀れな男だと。憐憫の目で見られるようになっていった。







 その目が変わったのは2025年の7月頃。その理由は最悪な事に、本当に大津波が起こったからだ。

 複数の国を巻き込み起こった大津波は人類に恐怖を植え付けた。


 マトモに機能せず幾つもの国が消えた。大国もその地位を失い今は中堅国以下となってしまっている。

 死亡者は桁違い。自然災害でここまでの被害が出るのは人類初らしい。


 津波が発生した原因は、無人島の火山が噴火したからだそうだ。

 生き残った国々は津波を恐れ、大規模な堤防を建てることとなった。








 ……私は、ずっと後悔していた。


 今こうして病に倒れ死を待つ身になったことで、ようやく私が予知夢を見た意味を知った。

 私にこの津波から皆を守ってほしいと願った神様による仕業だったのだ。


 そうだというのに私は自分の事ばかり考えていた。私一人生き残ろうなんて愚かな考えで一杯だった。

 その結果大勢の人々が死に、そして私は孤独に死ぬ。


「ああ…神様。……申し訳ありません」


 私は死ぬその時まで謝り続けた。津波による犠牲者やその家族や友達。そして予知夢を見せてくれた神様に。




 ただひたすらに…謝り続けた



















「…………これは、夢では…無いのか。……無いんだな」

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