私はまだ、本当のセックスを知らない

凪葉詩

第1話 快感が恐怖する

 私は玄関を開き明かりをつける。スーツを着た五十歳の男は扉の鍵をかけた。そして私を抱き寄せた。抵抗する力がない。成人して間もない私の体の中を、さっき男に奢ってもらったカクテルが体中を熱く駆け回っている。私はされるがまま受け入れよう思った。この男の不幸を慰められるのは私しかいないのだ。

唇が重なってできた密室で舌が抱擁し合う。お酒の香りがふわっとすると私は興奮した。男はスーツを乱暴に脱ぎすてネクタイを外す。上着を奪われベッドに押し倒され、ワイシャツのボタンが外される。青空色のブラジャーはホックがほどかれゆらりと落ちる。

「電気を消して」

 と言おうとしたが、その言葉を飲み込む。見てほしかった。

乳房が露出する。片方が男の口に含まれ、乳頭は舌でぐっと押されたまま、四方八方に転がされる。私は深く息を吐き出す。もうひとつの乳頭を指で圧迫され左右に捻じられると、身をよじり喘いだ。

 唇が胸から腹へ、腹から腰へと降りてくると、スラックスを脱がされる。そして、靴下を抜かれる。咄嗟に「足はだめ!」と言ったが、その言葉は宙を舞って消え去った。足の指は一本ずつ丁寧に口に含まれる。私が羞恥と快楽の狭間で悶絶する。

舐め尽くされると足の裏から股にかけて両足が接吻される。男は下着の上から陰部を唇で刺激した。好きなようにして、と脱力した。男はベッドの上で膝をつき、ズボンと下着を脱いで、そそり立つペニスを見せつける。私は下着を脱がされ、太ももを開かれると、股に顔をうずめられる。

 股を閉じ非力に頭を押して抵抗してみると、いっそう男が陰部に近づく。舌で小陰唇を開けられると、力が抜け喘ぐ。膣から尿道の方向に舌が上がってくる。突如、陰核を口に含まれ転がされた。たまらず足が震える。いっそう激しく動き回る舌。体中が性器になった。めちゃくちゃにしてほしい。

 陰核を責められながら二つの乳輪を指先で圧迫され、あちらこちらに揉み伸ばされると、陰核の声が頭の頂上まで上って来た。私は何と叫んだか覚えていない。舌が蠢く。全身の筋肉が収縮する力が入る。腰が浮く。膣の辺りの筋肉が脈動した。霧がかかったかのような楽園に至る。脱力する。

 便意で気がつく。肛門が裂ける。力を入れるとなお痛い。頭まで突き抜ける痛みを感じる。男は男根を私の肛門に抜き差ししている。声を出さないようにじっと我慢する。が、耐えられなくなって痛みに絶叫した。すると男は、その叫び声を聞きたかったというかのように、ペニスを何度も脈打たせた。ペニスが抜けてもとまだ少し便意がある。

 目をつぶって深呼吸すると、男は私の顔の上に腰をもって来た。眼の前に熱い氷柱が強烈に堅く伸びている。男は再び陰核の辺りを舌の不規則な動きで刺激する。くすぐったくて耐え難い。男はもてあそぶのをやめない。何かが飛び出そうな感覚に耐えながら、私の性器は喘ぎ声をあげ泣いて懇願する。許して。男の舌は許さなかった。陰核に吸い付かれ、舌で圧をかけて転がされると、もう我慢ができなくなった。言葉にならない叫び声と共に、陰部から液体を噴出した。頭に雷が落ちて全身がこわばった。再び私の膣は収縮と弛緩を繰り返した。朦朧として体が動かない。休む暇を与えられず、目の前にそびえているペニスを口にねじこまれる。

 容赦なく口内を突かれる。喉の奥に当たり嘔吐しそうになる。私はより一層、喉の奥まで飲み込んだ。男は私の頭を両手でつかんで乱暴に前後に振る。嘔吐反射が起こり、カクテルと胃液が混ざった混ざった液体を吐いた。胃酸の酸っぱさに私は顔をしかめて、やめて、と言う。その一言が聞きたかったとばかりに男はさらに私の頭を振る。吐物でぬめり気を増したペニスは、急にぐっと一回り大きくなり、陰嚢は縮こまっている。ペニスが口の中で激しく脈打ち暴れ、咽頭に何度も精液をばらまいた。

 男の荒い息遣いが聞こえる。喉の奥に吐き出された何億もの精子を吐物と混ぜて飲み込む。漂白剤のような匂いが鼻腔に充満する。男のペニスは私の口の中で柔らかくなる気配がない。仰向けになっている私の股を開出でそこに座った。

「そろそろ本気でするか」

 ヴァギナがペニスに睨まれている。男は両手で私の頸動脈を絞める。目の前がどんどん暗くなる。消えてしまいそう。気持ちいい。

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