第29話 事故です① (将太くん 目線)
柴垣がカップ麺を作るために、お湯をカップ麺に注いだ。お湯を注ぐことによってカップ麺の香ばしい匂いが鼻に入ってくる。
飯テロじゃねえか。
停電(惟光先輩が原因)のせいもあって、俺らはまだご飯を食べていない。
柴垣のせいで急激に腹が減った。やべえ、腹が鳴りそう。
グルグルグルグル
ユウの方からお腹が鳴る音がした。ユウも空いてるよな、ユウってなんだかんだ俺よりも食うし。ただ、女子にとってお腹が鳴ることは、すごく恥ずかしいことだって、姉ちゃんから聞いたことがある。
マズいのでは? ユウの隣にいる霞さんも気づいてるっぽいし。
「ユウちゃ......」
不意にユウにデリカシーもなく、声をかけようとする霞さんの声に被せるように俺はみんなに聞こえるように言った。
「あー、わりぃ。腹が減ったから、俺も晩御飯の準備をするわ」
そう言って振り返らずに、俺は柴垣のいる台所へと向かった。
これでしばらく大丈夫だろう。カップ麺にお湯を注ぎ終えた柴垣に声をかけた。
「晩御飯の準備をするなら、一言いえよ!」
俺の言葉に柴垣は首を傾げた。
「言ったけど......気がつかなかったのは、君たちの方じゃないか」
どうやら俺が爆発寸前の時に「そろそろご飯の準備をしないか?」と一言、俺らに話しかけたらしい。気がつかなかったな。
「そうか、わりぃ。で、自分の分しか準備してないのか?」
「あたり前じゃないか。そもそも君たちが何を食べるのか知らない」
「知らないって......机の上に置いてあるじゃねえか! なんで気がつかないんだよ!」
机の上を指さしていると「これのことか?」と、惟光先輩が机の上に置いてあったはずの食材(弁当とか、うどん)を持ってきていた。その後ろから惟光先輩の彼女さんも着いてくる。
「え?」
「いや、手伝った方が早めに終わるだろ?」
「まあ、そうだけど」
「そ、それにご飯はみんなで食べた方がおいしいし、私も手伝うよ」
「ありがとうございます」
二人に礼を言った。ふとソファの方を見た。ふわっと笑うユウの姿が見えた。
ああ、やっぱり
「好きだなぁ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます