第23話  いい加減にしてよ...



 さっきまでの恋バナの甘い空気はどこへ行ったの? って聞きたくなるぐらい、この空間の中で私と光瑠が叫んでいた。


「ぎゃああああ!!! 殺されるー!!!」


「どうか! どうか......命だけは! 命だけは勘弁してください!!!」


 私は近くにあるソファにしがみついた。チラッと光瑠を横目で見ると、光瑠はドアに向かって、土下座をしていた。


 そんな私たちに将太くんは呆れ気味に言った。


「うっさ! 耳元で叫ぶなよ。鼓膜が破れたらどうするんだよ」


 言われてみれば、確かにそうかも。でも、なんでこの状況で冷静でいられるの!? もう少し怖がってもいいんじゃない?


 恐る恐る顔を上げた。その時、将太くんがドアの向かって、話しかけた。


「すみませーん! ドアの鍵を開けていただきたいのですがー!!」


「「!?」」


 あの、将太くんが敬語を使ってる!? 今まで私たちと話している時は、タメ口気味だったのに......!


 ドアの方からは返事がなかった。や、ややや、やっぱり.........係の方が言ってた幽霊なのかな? ううっ、怖い。


 ブルっと身震いすると、隣にいた光瑠が小声で将太くんに向かって呟いた。


「滝口......おまえ、敬語を使うことができたんだな」


 光瑠の言葉に将太くんが前までの調子で、光瑠の言葉に食いついた。


「は? 柴垣こそ何を呑気なことを言ってんだよ? おまえが年上のクセに使い物になんねえから、ドアの向こうにいる人に問いかけただけじゃねえか」


 おっと、この流れはマズイ気がするよ......。


「待て、使い物にならないとは、どういうことだ? 君が僕と話す時にいつもタメ口だったから、驚いただけじゃないか」


「そのままの意味だけど? っていうか、カレー作る時にも言ったじゃねえか、敬える性格になったらそれなりの態度を取るって、記憶力は大丈夫か??」


「失礼な! ちゃんと覚えてるに決まっているだろう! それよりも君もそういった面で態度を改めた方がいいぞ」


「は? そもそも......」


 ほら、言わんこっちゃない。二人がくだらない口喧嘩を始めた。


 なんでいつも食ってかかるかな。光瑠の歪んだ性格のことだから、ほっとけばいいのに。


 私は仕方なく二人に声をかけた。


「あの...二人ともさ、向こうから返事ないけど、どうs......」


 「どうする?」と言いかけた瞬間、またもやドアの方から、何かがぶつかるような大きな音が聞こえた。


 ガン


「ひぃ!!」


「ぎゃあああ!!!」


「うお!」


 こ、今度はなに!?

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