第21話 きっかけ<将太くん 目線>
俺がユウと知り合ったのは小学六年生の時だ。俺がいつものように友達と近所の公園で遊んでいたんだ。その時に俺は転んで膝から血が出た。
本当は泣きたいくらい痛かった。でも、そんなものは俺のプライドが許さなかった。だから俺は強がって、平気なフリをして、友達と遊んでいた。
遊んでいた場所の近くに花壇があったんだ。確か、その時は春だったからチューリップが満開に咲き誇っていた気がする。
サッカーをしていたんだけど、ボールが花壇の方に飛んでいって、ユウの足元に転がったんだ。その時に初めて、ユウと話したんだ。
「そこにあるボール、取ってくれねえ?」
「ボ、ボール? も、もしかして、これのこと?」
そう言ってユウはサッカーボールを持ち上げた。で、その時は何も言われずにボールを返してもらったんだ。
時間が来て、友達と公園で解散した後、俺はこっそりと水場の方に向かった。蛇口を捻って、水を出した。擦り傷に冷たい水が当たってヒリヒリした。持ってきていたタオルで水分を取って、帰ろうとして振り向いた。
そこにユウはいたんだ。心配そうに俺を見つめていた。何を言えばいいか分からなかった。
その時にユウに言われた。
「い、今までよく我慢できたね。これ、絆創膏。つけるからちょっとしゃがんで」
女の子から絆創膏を渡されたことなんてなかった。すごくビックリした。ユウの言う通りにしゃがむと、膝に絆創膏を貼ってくれた。
「い、痛いの、飛んでいくといいね」
ふわっと笑うユウがすごくカッコよくて、可愛かった。
「じゃ、じゃあ、将太くん。また明日」
なんで俺の名前を知っているのか、分からなかった。だからユウに直接、聞いた。
「なんで俺の名前を知ってるんだよ?」
「そ、それは、だって同じクラスだし。わ、私、渡辺 夕。滝口 将太くんだよね?」
「え? 同じクラスだったのか? ユウっていうのか」
「う、うん」
「家はどの辺」
「あ、あっち」
ユウが指差す方向は俺に家の方向と同じだった。だからその日は一緒に帰った。
その日から俺はユウを好きなった。ユウのかわいい笑顔を一番、近くで見たいから。
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