第18話  戦犯だと気づいて



「ユウ! ユウ! 大丈夫か?」


 倒れ込むユウちゃんを揺らすことなく、声を一生懸命にかける将太くん。なんて優男なんだろう。


 一方でユウちゃんが気絶する原因を作った光瑠は、何が起きたのか理解していないように平然としていた。そんな人間が気絶した人を心配している人に、一番言ってはいけないことを言い放った。


「なんで倒れてるんだ?」


 ここからは皆様も想像しているように、将太くんが状況を理解していない光瑠にキレた。


「てめぇ、っざけんなよ! お前が懐中電灯の灯りを顔の下から当てていたもんだから、ユウが怖がって気絶したんだよ! さっきユウが怖がっていたのでを見なかったのかよ!」


「見てない。そもそも、暗いから見えないに決まってるだろ! あとこのぐらいのことで怖がって気絶など、聞いたことがない! 寝てるんじゃないのか?」


「なんだと!?」


 やばい、このままだと殴り合いに発展しそう。


「待って! 今、喧嘩したらユウちゃんが悲しんじゃう! それに今はここから出る方法を探した方がいい気がする」


 私の言葉に将太くんが気まずそうに下を向いた。一方、光瑠はというと......


「僕は別に悪いことをしたわけじゃないのに......なんで」


 なんで戦犯の光瑠がふてくされたような顔してんの。っていうか、


「光瑠そんなこと言わないで、それよりもいつまで懐中電灯を顔の下から当ててるの?」


 私の疑問に光瑠は慌てた口調で言った。


「こ、こここ、これは、アレだ。この方が周りが見やすいからで、決して暗いところやお化けが怖いわけではない!」


 光瑠、暗いところ怖いんだね。将太くんぐらいじゃない? 怖がってないの。


 チラッと将太くんの方を見ると、ニヤッと悪だくみを考えているような表情をしていた。しかも、光瑠が見つけた懐中電灯の光がいい具合に顔に当たっているから、より悪役っぽい感じになってる。


 何を考えているんだろう。


「将太くん......」


 私がそう声をかけた時、誰もいないはずの廊下から誰かが歩いているかのようにギシギシと音が聞こえてきた。


「「「!?」」」


 ど、どどど、どうしよう!? もしかして、泥棒? いや、でもこのタイミングで?


 私が考え込んでいると、ふとさっき係の西野さんが言っていたことを思い出した。


『幽霊が出てるって噂があるし、なんなら目撃情報も......』


 いや、まさかね......

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る