第6話 カレーのかん...せい?
「先輩には口を慎めって言っているのだ! 後輩の将太くんからすれば、簡単なことなんだろう?」
「だから、敬えるようになってから言ってくれねぇか? って言ってんだよ!」
「その態度を改めろと言っているのだ!」
喧嘩腰になる二人を見て私は呆れた。
隣にいるユウちゃんは二人の言葉に震えつつ、黙々と包丁で食材を切っていた。
ちなみに将太くんと光瑠は口喧嘩を始めてから、彼らは全くもってカレー作りに参加していない。
主催者の人も遠い目をしつつ、小学生と中学生グループの手伝いをしていた。
できることなら、一言だけでも声をかけてほしかった。きっと高校生だからそのうち収まると思っているんだろうなぁ...
二人の喧嘩はまだ続きそうなので、放っておいて私はユウちゃんに話しかけた。
「ユウちゃんは、将太くんと同じ高校?」
「は、はい。そうです。霞先輩は柴垣先輩と同じ学校ですか?」
どうしよう。ユウちゃんの雰囲気が小春に似てる。
ここで説明しよう!
小春は私の友達であり、推しなのだ!
このキャンプが終わったら、私がユウちゃんを推しに認定してそうな自分が怖い。
ユウちゃんの声がとても優しくて、本当に小春にそっくり!
「うん、そうだよ! 同じ学校に通ってるよ」
「そうですか。柴垣先輩っていつもあんな感じなのでしょうか?」
「あんな感じって?」
ユウちゃんは眉をひそめた。
「な、なんと言えばいいのか......その、男子特有のノリってあるじゃないですか。いつもあんな風に騒いだりしてるのでしょうか?」
あー、そういうことね。
ユウちゃんの言いたいことは分からなくもない。男子っていつも何というか、動物園にいる動物のように騒ぐ時があるもんね。
「うーん、光瑠とは教室が違うから分からないけど、一年生の時は猫を被っている感じがあったからねぇ」
「そうですか。ところで食材を切り終わったのですが、将太くんと柴垣先輩は放っておいてカレーを煮込んでもいいのでしょうか?」
ユウちゃんの言葉に私は喧嘩を続けている二人を横目で見た。
まだ続きそうだし、お腹も空いてきたし......
よし! 放っておいてカレーを完成させよう! うん、そうしよう!
私は二人を放っておくことにした後、ユウちゃんに指示を出した。
「もう煮込んでおこう! まだ、あの喧嘩も続きそうだし」
「分かりました! 霞先輩みたいなしっかりとした先輩と同じ班でよかったです」
照れくさそうに笑うユウちゃんを見て、心が温まっていく。ユウちゃんに笑顔を向けてお礼を伝えた。
「ありがとう! さ、カレーを完成させようよ!」
「はい!」
ということで、食材を鍋に煮込む前にご飯を炊いた。その後に、鍋で食材を煮込んで、ルーを入れて混ぜた。
おかげさまで、カレーを無事に完成させた。
ユウちゃんにカレーを皿に装ってもらっている間、私は男子二人に説教をした。
「二人ともどういうつもり? 料理中に喧嘩をするなんて、係員にも迷惑かけていることに気づいてよ」
「「はい......」」
「じゃあ、カレー食べるよ。ほら、早く座って」
二人を説教した後、テーブルに連れて行って座らせた。
こんな冷めた空気の中、私たちは出来立てホヤホヤで熱々のカレーを食べる羽目になった。
本当......この先が思いやられるよ。
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