第5話  Let’s do 自己紹介!!



 ううっ。なにを話せばいいのだろう。


 光瑠はさっきから、将太くんと睨みあっていて、使い物にならないし。女の子の方もしどろもどろしてるし。


 よおし! ここは私が誘導しないと!


「あの...バスの時に騒いでしまってごめんなさい。でも、自己紹介してないから、やらない?」


 ね? と光瑠の脇腹に肘を強めに突くと、光瑠は「うっ!」とうめき声をあげた。


「ま......まあ、霞の言う通りだな。とりあえず、自己紹介をしようではないか」


 よし! 光瑠もやる気になったし、するか!


「私は山吹 霞! 高校2年生です。三日間よろしくね」


 私がそう言うと、次は光瑠が自己紹介を始めた。もちろん、あの営業スマイルで(もう遅い)


「柴垣 光瑠だ。僕も霞と同じで高校二年生だ。よろしく」


 光瑠の言葉を聞いて将太くんの隣にいる女の子が青ざめた。


「え、高校二年生!? せ、先輩ってこと!?」


 小声でそんなことを言って、彼女は自己紹介を始めた。


「こ、高校一年生の渡辺 夕(わたなべ ゆう)です。み、三日間よろしくお願いします」


 頬を紅く染めている夕ちゃん、小春っぽくて可愛いなぁ。


 夕ちゃんが自己紹介を終えると、隣にいる将太くんに目を向けた。


 将太くんはめんどくさそうな顔をしつつも、夕ちゃんの視線に対してなに一つ文句を言わずに自己紹介を始めた。


「滝口 将太(たきぐち しょうた)。ユウと同じ高一」


 ぶっきらぼうにそれだけ言う将太くんに光瑠が突っかかっていった。


「なんだその態度は? 年上には敬えと学校で教えてもらわなかったのか?」


 将太くんは光瑠を変なものを見るように言った。


「敬える性格になってから言ってくれね?」


「なんだと!?......ったあ!!」


 光瑠が将太くんに向かって突進しようとしていたものだから、思い切って足を蹴ってやったよ。


 蹴ると言っても、そこまで強くはしてないけどね。


 私はなるべく平然な顔で二人に声をかけた。


「さ、早く料理を作り始めようよ! 食べるのが遅くなっちゃう!」


 私の言葉に将太くんは光瑠に憐れむような目をした後、夕ちゃんと一緒にきちんと返事をした。


「「はい」」


「じゃあ、まずは野菜を洗って切ろう! あ、光瑠はそこで待ってて」


「は? なぜだ?」


 なぜって......本当に料理下手な自覚ないんだね。


「光瑠には一番大事な仕事をしてもらうから」


「一番、大事な仕事......?」


 光瑠は疑わしい目で私をみていた。


「そう! カレーをかき混ぜる仕事! 一番、大事な役割でしょ?」


「なんで僕がそんなふざけた役割なんだ? そういうのは後輩の将太くんがすべきだね!」


「は? 柴垣こそ霞さんから遠回しに『料理下手だから一番、料理に影響が出ないものをして』と頼まれているじゃねぇか。絶対に柴垣がやるべきだね」


「は? ふざけんなよ!」


 光瑠が喧嘩腰になって、むさ苦しい男どもの第二ラウンド目の戦いが幕を開けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る