第2話  痴話喧嘩??

「説明がザックリすぎる! もう少し詳しく聞いておけ!」


 ただいまバスの車内。私は幼馴染の光瑠に胸ぐらを掴まれて、プチ説教のようなものを受けている。


「はぁ? 仕方ないでしょ。指名補習に呼ばれて、部活がある小春と話すタイミングが合わなかったし」


「言い訳を言うな!」


「は? 言い訳じゃないし!」


 私と光瑠の口喧嘩がヒートアップすると、後ろの座席から批判の声が上がった。


「はぁ、うっせーな。カップルがピーピー鳴くなや!」


 その声と共にドンッという音が聞こえて、光瑠の座席が揺れた。


「し、将太くん! 流石に座席を蹴るのはよくないよー!」


 刺々しい言葉を発した男子の隣から弱々しい女子の小声が聞こえてきた。チラッと後ろ向くと、髪が毬栗のようになっている男子と三つ編みをしている女の子がいた。なるほどね、君が蹴ったのね。


 まあ、確かに騒ぎすぎたかもしれない。周りを見ると、何人かがチラッとこちらを見ては興味がないかのように目を逸らしたりしている。いや、あれは引いてるのか。


 ごめんね、と私が後ろの座席の子に声をかけようとした時、隣にいた光瑠が私よりも先にその子たち(特に男子の方に)向かって声を荒げた。


「なんだと!? 初対面にしては失礼すぎないか? それになぜ僕が霞と付き合っていることにされているんだ!」


 それは確かに私も不服だよ! だからといって、声を荒げていいもんじゃないでしょ!!


 おかげさまで後ろの座席の男子も歯を剥き出しにした狂犬のように光瑠に向かって声を荒げた。


「は? 初対面やとしても、バスの中でピーピー騒ぐお前らが悪いし。っていうか、痴話喧嘩じゃねえならいいってもんちゃうわ!!!」


 ち、痴話喧嘩!? 私と光瑠って側から見たらそんな風に見えていたの!? 最悪!


「将太くん! 声が大きいよ! み、みんなビックリしてるし、ね?」


 隣の子が将太? と呼んでいた子を宥めると、途端に隣に座っていた男子は大人しくなった。すごい、凶暴な犬の飼い主みたいだ。(本人に言ったら怒られると思うけど)


「光瑠もちゃんと座って危ないよ」


 私は光瑠にそう言うと、服の後ろの襟を掴んで無理矢理、前に向かせた。不服そうな顔をしている光瑠に小声で耳打ちをした。


「アンタ、高校生なんだからもう少し態度をわきまえて」


「なんで僕が怒られる必要があるんだ!? 最初に喧嘩を打ったのは向こうじゃないか」


「だからこそ言ってんの! 喧嘩を買う買わないの話をしているわけではないから」


 私の言葉に光瑠は拗ねて、「寝る」とだけ言って、私の方に背を向けた。


 この先が思いやられるよ。

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