世界の境

ドニラカ

暗闇から起きて夢を見る。立ち上がって幻を見る。早く行って、生きたい場所がある

 午前の光が窓から差し込み、私は椅子に座る。


 無機質な画面が物語を待つ。冷酷に待つ。いつまでも待つ。


 朝食のあとの僅かなまどろみ、指を動かし言葉を紡ぐ。


 硬い感触、部屋の匂い、誰もいない静けさ。


 世界が私を作り、私が世界を作る。


 境が消える。蕩けて交じる。


 今日、私はあなたの世界へ行くのだ。


 万の時間で作った大地と海、千の時間で作った我が子と人の営み。


 見えてるようで見えていない。全ては頭の中にあるのだから。


 架空の命が運命のまま、赴くまま、旅に走る。


 喜びと虚栄、不安と疑心、絶望と無気力、受容と平穏。すべて背負う。我が子と共に背負う。


 あなたの笑顔が頭に浮かび、あなたの苦しみに共に悶え、その勇気に心震わせる。


 永遠とも思える打音と思索。無音が私を連れ去り、限りある時間が私を連れ戻す。


 窓から入る午後の光。


 今日、私はあなたの世界へ行ったのだ


 私はあなたの側に居たのだ。


 

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