オカルトmook誌に掲載された記事
『戦慄! 都市の心霊地図 20○○』
特集記事「“住んではいけない”団地 中部編」
File No.6│S団地/○○県○○市
ー2つの“探す声”が交差する団地ー
S団地で語られるもっとも有名な怪談は、「夜な夜な響く赤ん坊の泣き声」だろう。
音の発生源は不明で、報告者の隣室や上階にも乳児のいる住戸は確認されていない。
だが、実はこの団地にはもう一つの“声”がある。それは、「子供を探す母親の声」である。
取材によると、深夜、誰もいない廊下や踊り場付近で、女性が誰かを探すような声が聞こえるという。
「○○ちゃん・・・・・・○○ちゃん・・・・・・」と呼びかける声。「ごめんね・・・・・・」とすすり泣く声。
目撃例は少ないが、薄汚れたパジャマ姿の女性がうつむいて廊下を歩く姿を見たという証言もある。
編集部の独自調査によれば、かつてこの団地の空き部屋に置き去りにされた赤ん坊が死亡したという噂があり、「赤ん坊を置き去りにした母親が自責の念から後を追い、霊となってさまよっている」といった解釈が住民の間で広がっているとのことだった。
赤ん坊の泣き声と、母親の呼ぶ声。
交わることのない二つの声は夜ごとにS団地に残響する。
【心霊研究家・W氏のコメント】
「母と子、どちらも“気づかれなかった者”としてS団地に留まっているのではないか。この場所には、まだ何かが放置されたままなのかもしれない。」
――
・文中の「空き部屋に置き去りにされた赤ん坊が死亡した」という事件は、実際には確認できなかった。
・この本が発売された直後、肝試しに訪れる者が増加し警告がなされた。
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