第44話 閑話 ⑤ 青い石
東動家が神戸から引っ越してしばらく経った、穏やかな日の午後。天月ナオ、コウ、そしてハナは、いつものように近所にある坂の上の小さな神社で遊んでいた。今はおやつの時間で、グリル天月から持ってきた佐山ベーカリーのパンを食べてパック牛乳を飲んでいる。
コウがパンをちぎって豆柴のシーとサーにあげると、喜ぶ2匹はパンを口に咥えてじゃれ合いながら境内を走り回っている。
「シー!サー!ちょっと待ちなさいってば!」
ナオは微笑みながら、元気な犬たちを追いかけるハナを見つめた。その隣でコウがため息をつく。
「裕ニィが引っ越してからもうどれくらい経ったんやろ。なんか、急にいなくなっちゃったらなんだか寂しいなぁ」
「そうだね、コウ。急だったから、私もちょっと寂しいよ。だけど、裕ニィたちはお母さんが言ってたけど2年たてばまた神戸に戻って来るんだってさ。そうすればまた、4人で遊べるよ」
ナオはそうコウに言い、裕方と一緒に楽しく遊んでいた事を懐かしく思っていた。
「裕方にまた会いたいね」
ハナはそう呟くと、しゃがみ込んでシーの頭を撫でた。そして、突然思いついたように立ち上がると、持っていた小さな小袋を広げた。中には、太陽の光を浴びて淡く輝く、二つの青い石が入っている。
「ナオ。これ、二つあるでしょ?」
「うん、そうだね」
「これ、私のお守りなの。お母さんからもらった、特別な石なんだ」
ハナは、そのうちの一つをナオの手に乗せた。
「ナオ。また、裕方がここに戻ってきたらこの石を裕方に渡して。私のお母さんが言ってたの。この石を持ってたら、どこにいても会えるって」
ナオは青い石をじっと見つめ、驚きと戸惑いが入り混じった顔でハナを見た。
「ハナ、それホンマなん?すごい石やなぁ、何のアイテム?」
「コラ!! 、いつも言ってるでしょ呼び捨てはやめなさい。ハナちゃんって言いなさい」
「だって、ハナだって裕ニィのこと呼び捨てだから」
「呼び方はなんでもいいのよ。うん!だから、ナオに持っていてほしいの。そしたら、どんなに離れていても絶対会えるよ!」
ハナの純粋な瞳ときっぱりとした口調に、ナオはゆっくりと頷いた。
「わかった。この石、私が責任を持って裕ニィに渡すね」
ナオは青い石を大切に握りしめ、遠い東の空を見上げた。コウもナオの隣に並び、二匹の豆柴が二人の足元で静かに座っている。
「裕ニィ、東京におっても元気でいてな! またすぐに会えるから」
コウは空を見上げて呟いた。
三人と二匹の温かい思いは、青い石を通して、遠く離れた東動の元へと静かに届いているようだった。
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