これはアニメじゃない現実だ

紅あずま

夢は見るもんじゃない

 僕はこの人生で、この世界で主人公にはなれない。

 アニメの主人公のように何かの才能を持っているわけでも、主人公のライバルのように誰かの心を動かすようなものを持っているわけでもない。ましてや、当て馬にだってなれるわけがない。

 誰かの人生のモブになれればいい方だろう。下手したらストーリーにさえ登場させてもらえないモブ以下の存在かもしれない。きっと、いや、絶対そうだろう。

 何故そんなことが言い切れるのかというと、簡単な話僕には何もないからだ。

 才能もセンスも人気も権力も力も。僕には何もない。

 別に、無気力主人公を演じたい訳じゃない。だから「そんなこと言って本気出したら凄いんでしょ?」とか言われても勿論困る。

 だって、僕には努力する才能もないからだ。


 社会人になって数年経った。

 最近はちらほら同級生の活躍を耳や目にする様になった。

 誰かはテレビに出ていたり、また別の誰かはネットの世界で有名人になっていたり。

 そんな奴らに嫉妬して勝手に同類だと思っている奴に愚痴や文句を吐いたら、そいつはいつの間にか出世して人をこき使う立場になっていた。

 裏切られたことを知った僕は、息をする様にそいつをブロックした。気づけば僕の友達欄は両手で数えられる程に数が減っていた。

 そして、そんな奴らが羨ましくなって、何か有名になれる方法を模索する。

 しかし僕には、先程の記述の通り努力の才能がない。事務所やスクールなんかに所属しないで一発で自分の才能を発揮できる方法ばかり模索する。

 そして気づく。自分には誰かに自慢出来る何かがないと。

 僕じゃ誰かにマウントを取ることさえ出来ない。

 あいつらは、小さい頃から努力していたり、好きを貫いていたり、誰かに認められる努力をしてきた奴らばかりだった。

 努力をすることを一番に嫌い、常に周りや自分の境遇を言い訳に使ってきた僕には、背負う物も無ければ感じるプレッシャーもない。

 何度も転んでは立ち上がる度に溢れる血の味も臭いも僕は知らない。

 だから僕には才能もセンスも人気も権力も力も何もない。

 気づいてしまったら後は簡単だった。


 僕は自分自身に絶望し、疲れたので自殺した。


 綺麗事を言うつもりも、ここから改心して人生大成功する物語を紡ぐつもりもない。

 いつだってハッピーエンドに終わるわけじゃない。残念ながらこれはアニメではなく現実だ。

 これは僕の人生だから、他人のハッピーエンドを押しつけられるつもりはない。他人から見たらバッドでもトゥルーでも、これが僕にとっての最高のエンディングだ。

 だって僕は、


努力をすることが一番嫌いだから。

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