自滅の20:上すっぽんぽんフジワラ、ビーチで放置プレイ
フジワラと出会ってから、二か月が経った。
それは、ヒナがドMに目覚めてからの歴史、
そして昭和男と友情を育んだ時間でもある。
3人一緒に過ごす夏の日は、かけがえのない一日となった。
今日はとっておきの夏休みの物語だ。
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青い空。白い雲。白い砂浜。白い肌。
白い胸元。白い太もも。赤い頬。
今日は昭和男のプライベートビーチに来ている。
「かわい?」
15歳の、まだ熟れきっていない肌が、太陽の光に遊んではじける。
フジワラが水着姿を披露してくれた。
シンプルで少し大人っぽい漆黒のビキニは、彼女によく似合っている。
それもそのはず。
実はこの水着、デザイナーの特注品なのだ。
「僕が作らせたんだ!残念だが、今回は僕に軍配が上がるな!」
昭和男はそう高らかに、ヒナに勝利宣言した。
「僕のあげた水着を着て、僕のプライベートビーチではしゃぐ…。
今日のフジワラさんは僕のものだ!」
あっはっは、と昭和男の高笑いが響く。
だが、ヒナはすました顔だ。
「その水着作るのに使った、フジワラのサイズ…。
提供したのは誰だっけ?」
それを聞いた途端、昭和男は小さくなってしまった。
そう。フジワラのスリーサイズは、ヒナの魔の手によって流出させられたのだった(自滅の11参照)。
「…その節はお世話になりました…」
フジワラのスリーサイズデータは、人類の公共財産である。
それを享受する者にとって、提供者であるヒナは、神にも近い存在なのだった。
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プライベートビーチに、3人の他は誰もいない。何をしても自由だ。
フジワラはせっせと砂遊びを始めたようだ。
(無邪気にはしゃぐフジワラさん…かわいいなぁ…)
思わず昭和男の頬もゆるむ。隣のヒナがちょっと邪魔だが。
きっと砂の城でも作るのだろう。
そう予想しながら、懸命に砂を掘る姿を見守る昭和男。
しかし…
ちょっと、一生懸命過ぎないか?
砂遊びというより、もはや土木事業である。
人が潜れるほどの大きな穴をヒナとふたりで、せっせと掘り進める。
穴は6個にまで増えた。姿が見えなくなるほど深い穴だ。
一体何をするつもりなのだ?
昭和男は疑問に思っていたが…。
判明した。
実にこのふたりらしい遊びだった。
砂をまき散らしながら、穴から飛び出すヒナ。
その頭上めがけて、フジワラは巨大なピコピコハンマーを振り下ろす。
パコーン!
小気味良い音がビーチに響く。
間髪入れずに、再び穴に潜るヒナ。
別の穴から飛び出し、また…パコーン!
さらに潜ると、また別の穴から…パコーン!
これ…
もぐら叩きだーーー!!!
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さすがに、である。
自由とはいえ、さすがに、である。
「もうちょっとマシな遊びをしなさい!」
昭和男は、そう叱らざるをえなかった。
ヒナとフジワラ、怒られてちょっと反省。
別の遊びを考える。
フジワラが思いついたようだった。
「じゃあ、スイカ割りは?」
「そうそう、そういうの!」
これには、昭和男もご満悦。
やっと正しいビーチ遊びができる。
…と思ったのに…。
「スイカないけど」
フジワラから、とんでも発言が飛び出す。
それでも目隠しをし、棒を持って探索するフジワラ。
「スイカ割りでスイカがないんじゃ…
じゃあただの「割り」だね」
そうにこやかに話すヒナは…首から下が砂に埋まっていた。
頭だけを砂の上に出し、何かを待っているヒナ。
目隠しをし、棒を持って近づいてくるフジワラ。
何を…何を割るつもりなんだ!!!
「スト――――ップ!!」
容易に想像がついてしまい、またもや冷や汗をかく昭和男。
このビーチに滴って良い赤い液体は、スイカの汁だけだ。
https://kakuyomu.jp/users/aomigemba/news/16818792437527831984
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「ヒナ!ちょっと来い!」
さすがに目に余ったのか。
波打ち際でパシャパシャ泳ぐフジワラを置いて、昭和男はヒナを呼び出した。
「僕はかわいいフジワラさんが見たいんだ。少しは自重しろ!」
フジワラを眺めるつもりなのに、いつもヒナがフレームインしてしまう。
昭和男はそれが気に食わないのだ。
「おまえが余計なことをしなくたって、フジワラさんはこんなにも輝いて…」
そう振り返ったが。
いない。フジワラが。
そこにあるのは、ただ青い空と海だけ。
ザザ…ザザ…と、波の音だけがむなしく響いている。
うそ…だろ?ちょっと目を離した隙に…
「まさか…沖に流されたのか…!?」
一気に青ざめるふたり。
海は危険だとわかっていたのに、どうして目を離してしまったのだ。
どうして…!!
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一方その頃。
岩場の陰では、フジワラがふるふるの胸元をおさえて、途方に暮れていた。
ビキニの上が流されてしまったのだ。
そこへ、ヒナと昭和男がやってきた。
フジワラを探している。
「フジワラ!」「フジワラさん!」
「ここよ…」
フジワラも返事をするのだが…。
「フジワラ!」「フジワラさん!」「ここ…」「フジワラ!」「フジワラさん!」「ねぇ、ここ…」
「どこなんだフジワラさん!!」「ここだって…」「返事をしろフジワラ!!」
パニックになって、大声で連呼しまくるヒナと昭和男。
自分達の声でかき消してしまい、フジワラの返事が聞こえない。
フジワラも、この姿では出るに出られない。
さらに焦りまくるふたり。
フジワラが流されたと確信し、船まで借りてきた。
「くそぉっ!やっぱり沖か!!!」
「フジワラァ!!!」
そう、血相を変えて、全速力で沖へと出て行ってしまった…。
皆のアイドルフジワラ。
愛され過ぎた結果、上すっぽんぽんで放置プレイが決定。
この夏一番の思い出となるのだった。
誰もいなくなったビーチで、半裸のフジワラは呆然と海を眺めていた。
カモメだけが頭上を優雅に飛んでいた。
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