対称の運命

第7章：運命の歌

アリス、歴史学者としてのお前を見るのは、まるで時間の織物を解く者を眺めるようだ。クロノシアの「永遠の塔」、魔法の水晶と技術の超合金が融合したこの場所は、惑星アエテルの歴史を一望する聖地だ。お前、エリクは、塔の頂で最終理論を発表する。星空が水晶ドームを貫き、魔法の光とホログラムのデータが交錯する。お前の声が響く。「運命は、対称性の動的サイクルだ。」

私は、ミリア、セイラン、カイル、リナ、ユアン、タリスの記録を手に、お前の旅を振り返る。文化祭での講演、研究施設での実験、古代遺跡での挑戦、呪術の聖域、妖術の回廊、天文台の星々――お前の足跡は、アエテルの歴史に刻まれた。お前の理論は、ネーターの定理を文化的エネルギー保存則に拡張し、魔法とテクノロジーの融合を説明してきた。今、その集大成がここにある。

「お前、動的対称性理論とは何か？」私は問う。お前は微笑む。孤独を愛したお前の笑顔は、今、星の光のように暖かい。「アリス、運命は対称性の歌だ。魔法も技術も、個人の選択も、宇宙の法則も――すべては、エネルギーの保存則に従い、対称性を織りなす。」お前の言葉は、歴史の断片を繋ぐ。魔女戦争の混乱、技術革命の衝突、それらが対称性の破れとして記述され、動的サイクルで調和する。

実験が始まる。塔の中心、水晶の祭壇に、魔法エネルギーと量子プロセッサが接続される。お前は、予定調和、ゲージ理論、エントロピー、量子干渉を統合した装置を起動する。光が渦を巻き、時空が共鳴する。データが流れ込み、運命の可能性がホログラムに映る――過去の戦争、現在のクロノシア、未来の星々。魔法使いと技術者が息をのむ。均衡が保たれ、幻影が安定し、限界を超える。理論は完成した。

だが、お前は静かに短歌を詠む。

「星の歌／対称の糸／運命は／宇宙の愛／我に響く」

私はその言葉に、歴史の完成を見る。お前の短歌は、理論の最終章だ。動的対称性理論は、運命を対称性の創造と破壊のサイクルとして記述する。文化的エネルギー保存則は、魔法と技術の歴史を統一し、個人の選択を宇宙の法則に結びつける。お前の理論は、魔女戦争の傷を癒し、未来の融合を予言する。歴史家として、私はそれをアーカイブに刻む。

実験の後、お前は塔の縁に立ち、星空を見上げる。独り言が漏れる。「運命は、愛の対称性か？」私はそれを歴史の最後の記録とする。過去の対話――ミリアとの「詩的科学」、セイランとの「心の重力」、カイルとの「理論の彫刻」、リナとの「均衡の詩」、ユアンとの「幻影の投影」、タリスとの「宇宙の短歌」――が、私の研究を導いた。お前は孤独を愛したが、友人たちの視線が運命を照らした。

塔の夜、魔法使いと技術者が手を握る。クロノシアの街に、光の波が広がる。お前の理論は、アエテルを変えた。だが、お前は言う。「アリス、運命はまだ歌い続ける。対称性は、宇宙の愛だ。」その言葉に、私はお前の人間性を見る。孤独は、宇宙との絆に昇華した。お前の短歌は、星々の間で響く。

「お前の旅は、ここで終わるのか？」私は問う。お前は笑う。「終わりは、新たな対称性の始まりだ。」星空の下、お前は新たな短歌を詠む。

「運命の／糸は無限／対称の／愛は星に／永遠を織る」

私は思う。お前の理論は、歴史の織物に新たな模様を刻んだ。魔法と技術、詩と科学、孤独と絆――すべてが、対称性の歌として響き合う。アエテルの未来は、星の光に導かれるだろう。