第45話 天使様とか違うので!

 広範囲浄化……凄すぎる


 もう外のテントにいる人たちは全て浄化が終えた。

 あとは真・妖精の湖の水を飲めば完治する。


 看病していた人たちも、真・妖精の水を飲んだからか、さっきとは違いほんのりと肌の血色がいいように見える。

 ついさっきまで、倒れそうになりながら看病していたのに。


 ——よかった。


 変な名前になったけど、【真・妖精の湖】すげー!


 取り合えず、このテントの人達はもう大丈夫だ。


 水を飲ます役割も、いつの間にか打ち解けていた赤い狂騎士たちが、率先して手伝っている。


 赤い狂騎士たちの見た目は怖いけれど、中身は最高に優しくってかっこいいんだから! 街の人たちに分かってもらえて、なんだか嬉しい。


 よし! 次は病院と教会にいる人たちの治癒だ。


 苦しんでいるみんなを助ける!

 なんたって、今の私は無敵だ。

 だって、進化した広範囲浄化があるんだもん。


 そう……この時の私は、治癒できることが嬉しくて、すごく調子に乗っていた。


 あとでどうなるかなんて考えずに……

 浄化魔法を使いまくっていた。


「《広範囲浄化》」


 病院に入り、すぐさま広範囲浄化魔法を使う。


 すると、外にいた人たちと同様、病院にいる全ての人たちの体が光る。


 急に寝台に横たわっていた人たち全員の体が輝いたので、看病していた人達が何事かと動揺している。

 そりゃそう。


 そこへ、すぐさまテーバイの騎士たちが、間髪入れずになぜ光っているのかの説明をしてくれる。


 テーバイの騎士たち判断が早い!

 シゴデキ!!


 この病院内にも外に作ったものと同じ、大きなウオータージャグを設置し、病気の人も看病している人にも飲んでもらう。


 よし、次はラストの教会だ!


 数人のテーバイの騎士を引き連れ、病院の隣にある教会へと向かう。


 ここでも同じように、入ると同時に広範囲浄化を使うと。


「天使様……!?」

「とうとう天使様が教会にも助けに来てくれた」

「ああ……ありがたや」

「天使様!」


 ——んんん?


 なんだろう反応がおかしい。

 私に向かって、看病している人達が手を合わせて拝んでくる。

 

 しかも私のことを天使様と言いながら。


 ちょーっ!? 天使様ってなんぞや! 

 我、普通の人ですが!?


 動揺のあまり、また変なイマジナリーさんが出てきた。



 どうやら私が今までやってきた事が、天使様が助けに来てくれたと言う事になっているようだ。


 看病をお手伝いしている人達をよく見ると、もとはテントで看病していた人達だ。


 なんなら、テントで寝込んでいた人までお手伝いに来ている。


 どうやら自分たちが元気になったので、教会にお手伝いに来ているよう。


 ってか、真・妖精の湖の水の効果凄すぎる!


 そんなすぐに元気になる!?


 とりあえず、天使は置いといて、水を配ってくれる人員は助かる。


 病院と同様に大きなウォータージャグを設置し、水を飲ませてもらう。


 教会が最後と言うのもあり、元気になった人がどんどんお手伝いに来てくれ、あっという間に教会にいた人の全てが完治した。


 凄い……私が想像していた何倍も早く、事態が収束した。

 これもひとえに、レベルアップした浄化魔法のおかげ。


 全ての病人が完治してしまえば、そこはもうお祭りの始まり。

 その場にいたみんなが、何処からともなく酒を持ってきて、酒盛りを初めている。


 もうこの場所は、お祭り騒ぎとなっている。


 ちょっと前までの、街が死んでいた状況はどこへやら。


 今はビールを飲んだりと、至る所で宴会が知らぬ間に始まっていた。


 それは凄く楽しくて、良いのだけど……




 ……困った。




 この崇拝してくる瞳。どうしたら良いの!?


 調子にのって、周りを気にせずに浄化しまくったせいで、病気だった人や看病しながら死にそうになっていた人達が、私のことを天使様と言って崇め奉る。


 何度も「私は普通の人間で、たまたま浄化できたりと、変わったスキルを持っていただけでぇ…… 」とか言ってみたんだけれど、話は全く通じず。


「ええ、ええ、仮の姿なんですよね。誰にも天使様の秘密は言いません」

「助けて頂いた恩は忘れません。もちろん天使様のことは一生心にしまっておきます」

「恩を仇で返すような事はしません! 誰にもこの秘密は言いません」

「天使様のことは秘密なんですよね。分かっておりますとも」


とか言い出す始末。



いや、だから。



秘密とかじゃなくて、そもそも天使とちゃう!!

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