第35話 レティシアがいなくなった……
その頃、父——ダクネルやおもちたちは、部屋に居るはずのレティシアがいない事に気付き、慌てふためいていた。
・
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『どういうことっち!』
あるじの姿が急に消えたっち。
わりぇがそばに居て、なんで消えたっち!?
いなくなった事に、わりぇが全く気付かないなんて……
あるじがわりぇに、何も言わずに出て行くなんて、あり得ないっち!
……ってことは、誰かに攫われたとしか……!!
だけど、どうやって!?
わりぇが側で寝ていたのに!
侵入者に気が付かないとか、そんな事あるっち!?
『ぬぅぅん! 許さんっち!』
「おもち様、落ち着いてください!!」
つい、あるじの事が気になって、暴れまくってしまった。
あるじの父が、暴れるわりぇを必死に止めに来た。
『ぬぅ……すまんっち』
だけど、心配っち! あるじは戦った事がないっち。
わりぇが守らなくてどうするっちぃぃぃ!
「こんなにも厳重な宿屋に、一体どうやって忍び込み、レティを連れ去ったというのだ。それに何の目的で……」
父の眉間に皺がよってるっち、父の言う通り、目的が分からんっち。
なんであるじを攫うっち。
理由……ぬううん?
あるじは優しくって、ウンマイ飯いっぱいくれるっち。
はっ!?
——そうか。
あるじにウンマイ飯を作らせるために!? 攫ったっち!
「ダクネルよ、これは憶測でしかないが、レティシア嬢を連れ去ったのは、アクダマス侯爵に関係している奴らではないかと思うんだ。このタイミングで連れ去るなんて……あまりにも」
「それは私も同じことを考えていました!」
ぬううん。
父とテーバイの男が、あるじをさらったやちゅの話をしているっち。
アクダマスってやちゅが、あるじを攫ったっちね。
ウンマイ飯を作らせるために。
そんであるじをコキ使って……許さないっちぃ!!
あるじぃの気配さえ分かれば、それを辿ってあるじの所に行くっちのに。
なぜか、急にあるじの膨大な魔力の気配が、全く分からんっち!
何でっちぃぃ。
「国王陛下、とりあえずアクダマス邸に急ぎませんか。きっと屋敷のどこかにレティシアがいるはずです。私の可愛いレティを誘拐した事を後悔させてやるわ」
「ダクネルだけで、敵が百人いようと勝てそうだな。よし急ごう」
★★★
男たちは明日まで眠っているし、とりあえずだけど身の危険は回避した。
あとは、この屋敷から出るだけ。
「でもなぁ……」
正直かなり不安はある。
今まで一人で行動したことがないのだから。
おもちと再開してからはずっと一緒だったし……
パンッ!!
「よっし!!」
思いっきり両頬を叩き気合を入れる。
うだうだ悩んでいる
大丈夫! 攻撃魔法は使った事ないけど、敵を見つけるたびに【睡眠】を使えばいける!
よし! 奥に見える扉を開こう。
「えっ!?」
待って、この扉。当たり前にあるアレがない!
そう、ドアノブがない。
「こんなの、どーやって扉を開けるの!?」
思わず扉に触れると。
バチッ!
「っつ!」
触れた手が痺れた。静電気のような感覚。
これはもしかして何かある? 扉も魔眼で調べたら分かるのかな?
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魔道具で鍵がかけられた扉。
中央に付けられた四角い魔道具に、鍵の魔道具を翳すとカギが開く。
無理矢理に開けると、扉が爆発する。
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何これ!?
無理矢理開けると爆発する!?
身体強化して、叩き壊す所だった。
ふぅー……魔眼のおかげで助かった。
とりあえず、鍵となる魔道具よね。
眠っている男たちに目をやると……胸のポケットの所に、【ドアの鍵】って文字が浮かび上がっている。
そうか、今は常時魔眼を使っているからだ。
知りたい情報が見える。
魔眼の使い方が分かってきた。
上手く言えないけれど、目に魔力を送る感じっていうのかな?
目に魔力が流れている状態だと、知りたい情報を常に見る事が出来る。
魔眼って便利だわ〜。
などど感心しながらも、ポケットが光る男性に近づく。
起きないと分かっていても、体に触れるのは少し緊張する。
そーっとポケットの中に手を入れると。
「ええと、これかな?」
何かが手に触れる、取り出すと四角い魔道具が入っていた。
大きさからして、扉にはめ込まれているのと同じくらいの大きさ。
——これが鍵だ!
急いで取り出し、扉に翳す。
すると、カチャリと音がなり扉が開いた。
——開いた!
よし、外にでよう。
そーっと扉を開けて外の様子を伺うと、長い廊下が続き中央広間に、下に降りる大きな階段が一階まで続いている。
どうやら想像していたよりも広いお屋敷のよう。
部屋の数は多いが、人の気配は無いようだ。
なぜなら魔眼にそう書かれている。
それ以外に気になるのが、壁などに常時現れる【魔力探知無効・認識阻害】これって、この建物自体を外部から見えなくしている魔道具が埋め込まれているのでは?
さらに魔力探知無効……この屋敷にいる限り、魔力を探知されないって事だから……う〜ん? 魔力探知が出来ないと
あっ、魔力が探知できないと
きっと、アクダマス領で作られている悪い魔道具を、この場所で何かしていたに違いない。
作っていたのは、今眠らせているアクダマス領主の息子たち。
この謎の建物は、後でテーバイ陛下に報告するとして、今はここから、急いで脱出しなきゃ。
私は慌てて階段を駆け下り、一階にある外へと続くドアに向かって走る。
——あとちょっと! あの扉を出たら、この謎の屋敷から出られる。
外に出る扉にも、同じような鍵があったので、さっき奪った四角い魔道具を扉に翳す。
この鍵で開かなかったらどうしよう。
焦りながらも、ドアに鍵を翳す。
カチャリ!
——開いた!!
鍵が開いた音がしたので、押して開けようとすると。
反対側から扉が押し開かれ。
「兄貴ぃ、わざわざ迎えに来ててくれたのか? 珍しいな」
「「え!?」」
武装した男が、ドカドカと中に入ってきた。
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