告白
ダッチマン
第1話
僕は、君が嫌いだ。
いつも人の顔色ばかり見て行動して、自分の意思なんてなくて。
自分から何かをしようとはせず、面倒なことからすぐ逃げる。
誰かに任せて、その人がミスをすれば、指摘だけして、自分は何も背負わない。
代案も出さず、ただ「違う」とだけ言う。
人に頼りたいくせに、うまく話せないから勝手に決めて。
でも、それを否定されると、不機嫌になる。
かと思えば、何も言ってくれないと、不安になる。
……何がしたいんだ、君は。
優しいって言われることもあるけど、それは違う。
誰かがミスしても怒らないのは、期待してないだけだろ。
「そういうもんだ」って、自分に言い聞かせて、距離を取ってるだけ。
本当は、誰にも興味がないくせに。
だから君の「大丈夫?」には、心がこもってない。
自分の中の“誰か”に言わされてるだけだ。
誰かといる時、君はいつも聞き役に回っているようで、
実は、自分の話をしたくてたまらない。
けど、話す番が来ると「仕方なく話すよ」みたいな顔で言う。
話したかったなら、もっと楽しそうに話せよ。
女の子とデートしていた時もそう。
本当にその子が好きだったのか?
それとも、“女の子と一緒にいる自分”が好きだっただけじゃないのか?
だから告白までに時間がかかって、
結局、何も始まらないまま疎遠になったんだろ。
それなのに、そのことを人に話して、慰められようとする。
……全部、自分が悪いのに。
君には、何に対しても意欲がない。
それを指摘されても、「わかるよね」で済ませる。
自分でも把握してるくせに、何も変えようとしない。
……そりゃそうか。
意欲って、意思のある人間にしか湧かないものだから。
そんな君なのに、なぜか周りには恵まれていて。
君を慕ってくれる人もいて。
君も、その空間に“なんとなく”心地よさを感じている。
けれど――
君自身は、なぜ好かれているのかわかっていない。
そして、わからないまま、それを人に直接聞く。
「なんで自分のこと、好きでいてくれるの?」って。
そんなことを聞いて、相手が口にした理由を聞いて、
今度はその言葉に、安心して、優越感に浸る。
君が欲しいのは、“ありのままの自分”を好いてくれる人。
だから、自分を変えようとしない。
話せない自分も、理解してくれることを前提にしてる。
――そんな甘えが、まだ通じると思ってる。
君が、このまま世の中で生きていける未来なんて、
僕にはもう、見えない。
君は、たまに「いつ死んでもいい」なんてほざくけど、
本当はそんなこと、少しも思ってないんだろ。
ただ、なんとなく生きるのが面倒なだけだ。
考えて動くのがだるいだけだ。
――死んだ後の周囲の反応を、見てみたいだけなんだろ?
君には、どこまでも“承認欲求”が付きまとってる。
けど、それをむき出しにしないようにしている。
だから、「君ってこういう人だよね」って言葉に、
異様なほど嬉しそうに食いつく。
わかってほしいのは、よくわかる。
でも、人に見せなければ理解されるわけがない。
……そんなこと、わかりきっているくせに、
なんで、そうしないんだ。
……また、か。
やっぱり、ここでもまた――
「ありのままの自分を、察してくれ」ってか。
……ほんとに僕は、どうしようもない。
それでも誰かは言ってくれる。
「君はいい人だ」
告白 ダッチマン @trystophan_7k15d
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