捨て身のヒット商品


「昔ね、とても評判が良くてね、でも余りにヴィーナス様がハッスルなされて、お仕事に支障が出て禁止になってしまったのね、残念だったわ……」


 どうやら床の下手な方がいて、悩んだ末に裸になって、体の上をお菓子で飾りつけして、夜伽に臨んで、念願かなったらしいのですね……


 ……


「アテネ様が最後だったわ♪私ね、あれからも色々考えていたの♪試したくても自分では飾れないでしょう?」

「だからね、お願い、試させて♪」


 ……


 渋々応じたレイチェルさんでしたが……新しい『NYOTAIMORI』のエロいこと……

 さすがに詳しくは話せませんが、剃られたのですね……そして……


 アルコール度数の高いリキュールを入れた、キャロブチョコレートムースですね……


 その……口に出すのも憚れる所に……塗りたくられて……

 飲んでもいないのに、いささか酔いが回ったりして……


 ……


 終わった時には、ぐったりしていたレイチェルさんでした。


 レイチェルさんの『犠牲』により、新商品は大好評。


 新商品というのはレイルロードスウィーツオートカフェ用の缶モンブラン、これ、五十円で売られることになりました。

 レイルロードスウィーツオートカフェは、一律五十円ですからね。

 もっともウイッチさんは無料とかなんとか……


 『ずんだ餡水ようかん』と『キャロブチョコレートゼリー』は、三十円という価格設定です。

 これはレイルロードの『コッペハウス』で販売されることに決まりました。


 『代用キャロブチョコレート』は、物資補給部の通販カタログに載りました。

 チューブタイプにして定価十円です。

 ペクチンなど使わなかったのが『お安い』元のようですね。


 影山物資補給部長が、

「やはりできたじゃない♪」

「よくマドレーヌさんが監修してくれたわね、私がいくら頼んでも断られたのに」

「まあ、いいわ♪サリー様が呼ばれておられるわよ♪早く行きなさい♪」


 ハウスキーパー事務局に行きますと、

「サリー様がお待ちです」

 

 サリーさんの執務室に入ると……なんとマドレーヌさんもいます。

 

 ……なぜ、マドレーヌさんが……そういえば『NYOTAIMORI』って禁止だったと聞いたわ……

 ……私とマドレーヌさん、叱られるのかしら……お母様に怒られそうね……

 

 レイチェルさんの母親、キャンディスさんって、結構厳しいのです。


「レイチェルさん、ご苦労様ね、私個人としてお礼を言うわ♪」

「私たちエラムの女は、知っての通りチョコレートが大好き、媚薬とまでいわれているのは知っているわね♪」


「知っております、でもそれはカカオから作られるチョコレートの効果と聞いております」

「そうなのよね、でもキャロブで本物のチョコレートのような効果の物ができたのね♪」

 ちらっとサリーさんがマドレーヌさんに視線を向けました。


 マドレーヌさんが、

「偶然でしたが、レイチェルさんの『NYOTAIMORI』の反応を見せてもらい、閃いたのです♪」


 ……ひょっとして、あのムースの話なの……恥ずかしい……

 顔が赤くなるのが自分でもわかるレイチェルさんです。


 サリーさんが、

「私も試してみたのだけど、陶酔するほどおいしかったわ♪いささか夜は困ったけどね♪」


「これが『キャロブチョコレートムース』よ、エラム限定で売り出すことになったわ♪」

「でね、前からアレクサンドラが貴女を欲しいと云ってたけど、今回の件で、響子さんが断固として転出を拒否したの」

 響子さんとは景山物資補給部長のことですよ。


「そこでお嬢様の裁定で物資補給部のままとなったのね」

 サリーさんがお嬢様と呼ぶのは、ヴィーナスさんのことなのですね。


「でも、それならばご褒美がいるとお考えになったようで、貴女のお父様の元の公爵領の一部だけど、お屋敷のあるあたりをポケットマネーで購入されて、貴女に下賜されることになったの」

「お母様には『マーショニス(女侯爵)』を名乗ることが許されるわ、貴女もレディ・レイチェルと呼ばることになるわね」


 レイチェルさんとキャンディスさんは、家族で住んでいた館に住むことになりました。

 ささやかな領地でしたが、なんせ黒の巫女さまが下賜された領地と館、その住人ですからね。


 キャンディスさんが、

「懐かしいわ……もう館は崩れていると聞いていたのだけど、ヴィーナス様が大いなるお力で直してくださったのね……レイチェル、貴女のおかげね……」

 レイチェルさんが、

「お母様、私たちは常はニライカナイにいるけど、時々はここに戻って、お父様を忍びましょう……」 


「そうね……旦那様、私たちは帰ってきましたよ……」

 キャンディスさんが、小さくつぶやきました。


 FIN

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