ニンゲンコワイ

 思えばつまらない人生だったと思う、モブのように暮らしモブのように活躍もなく、そして今あっけなく死にそうになってる。


『おい、何勝手に死のうとしてるんだ』


 突如頭に流れ込む声。


『チッ死なれては困る、人間よ、我が力をちぃとだけ貸してやろう』


「うっ......」


 確か、僕はモンスターにぶっ飛ばされて......


『おい人間、今お前は覚醒状態にある、存分に我が力を使うといい』


『え、誰?』


『ふんっ誰でもいいだろう、とりあえず今は体の動かし方とモンスターに集中しろ』


「そ、そうだった、モンスターって、は?」


 喋ってはじめて自分の身体の異常に気付いた。


 いつもより高い声、いつもより少しだけ低い視線、そして体に満ちる万能感のようなもの。


 ロ リ に な っ て る


 なにより重大な事実に気づいてしまった。


「あ、ああ、僕の......僕の鎮珍ジャイアントソードがない!」


 これでは僕の毎日の、唯一の楽しみ「先生とのひ・み・つの特訓」AVシリーズⅢが使えないじゃないか!


「ノォォォォォォ!......許さない、絶対に許さないぞぉぉぉ!」


 この時、僕の中で何かが吹っ切れた音がした。


「ブ、ブルォォォォォ!」


 モンスターが威嚇をしているが知ったこっちゃない。


 とにかく今はこの怒りをぶつけたい......


『えぇ......なにこの人間』


「うるさい!コロス!」


 まずはこの体に満ちている力を手と足に集中させ、そしてモンスターの顔面の前まで跳躍する。


厄災の一撃カタストロフ・ブロー


 うぉ、なんか必殺技みたいなの出た。

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モブが目立って何が悪い! ぽんポッポ @0416hamukatu

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