スイーツ。それは楽しさいっぱいなイメージのあるもの。
本作はそんなスイーツの持つ「ダークな側面」を詠んだ作品集です。
童話とかメルヘンの世界では、「お菓子」というものが度々登場します。でも、「お菓子の家」に代表されるように、それは時には「人の心を強く誘惑し、恐ろしい罠にかけるもの」にも使われる。
甘く、人の心を強く惹きつけるもの。そんなお菓子だからこそ、「世界の闇の部分」にモチーフとして登場することで、強烈なアクセントとして働くことにもなります。
ダークでメルヘンな雰囲気のある、お菓子の短歌集。美味しそうと感じるか? はたまた怖いと感じるか?
お菓子を検索して眺めているだけでも楽しい。いちご、チョコ、オレンジ、ホイップクリーム。ただしお菓子からの連想がことごとく黒系。もともと詩情が強い作家さんだけに、短歌もおもしろい。
好きな首、抜粋。
「価値観が洗われてゆく矮小なスプーン一つで歪むバヴァロワ」
やわそうな価値観。つついてみたくなる。スプーンも小さいんだろうな……。たぶん自分を重ねながら食べるのかも知れない。
「この星のあらゆる呪縛を取り払いズコットケーキの幸福となる」
ズコットケーキってフルーツの断面がすごく華やか。この世の哀しみが全部なくなったら、地球ズコットケーキになるのかな。想像するだけで面白い。