堕落した王が復活：忘れ去られた王国の第二の人生

@RenjiKaze

第一章「新しい人生の始まり」

子供たちに多くを与えない時代。教育は一部の者だけの贅沢であり、夢は棒と土で作られていた。そんな時代、子供たちは「王様」や「騎士」を演じて遊んでいた。だが、その中にひとり演じてなどいない少年がいた。

荒川タツヤ、八歳。彼は、自分が本当に王様だと信じて疑わなかった。

それはただの遊びではない。彼にとって、それは現実だった。

命令することが好きだった。他人をからかい、泣かせ、そして肩をすくめて笑う。同年代の子供たちは彼を恐れていたその恐怖が、タツヤに“力”を感じさせていた。

毎朝、彼は木の剣を手に、自信に満ちた顔で「王国」の見回りに出かける。彼にとって、世界は自分の支配下にあった。

母親は何度も彼を叱った。「タツヤ、人をいじめるのはやめなさい。いつか罰が下るわよ。」

だが、タツヤは笑った。「王様に罰なんてあるもんか。」そう、彼は思っていた。

だが、その朝の空気はいつもと違っていた。冷たく、湿って、重い。空は薄暗く、地面は泥で滑りやすくなっていた。

それでもタツヤは叫んだ。「我が民よ、ひざまずけ！供物を持ってこい！持ってこなければ…罰だ！」

子供たちは怯えながらも従った。ただひとり、雪のような白髪に、冬の草を思わせる緑の目を持つ少年だけが震えていた。六歳か七歳くらいだろうか。彼は膝を抱えてうずくまっていた。

「どうした？怖いのか？ママが恋しいか？」タツヤは彼を嘲笑い、背を向けて歩き出した。

そのとき足元が滑った。

木の剣が宙を舞い、地面の端を越えて消えた。その先は、まるで世界が終わっているかのような黒い影底の見えない暗闇。

タツヤは泥だらけになって立ち上がり、周囲を見回した。

「俺の剣は？どこ行った？」

「わ…分かんないよ…」と他の子供たちは答えた。

「役立たずどもが！」タツヤは怒鳴り、怒りに任せてその影に向かって進んだ。

そして地面が、消えた。

足は宙を切り、そのまま彼の体は落ちていった。

誰も見たことのない深淵へ。

光の届かない場所へ。

“王様”の最後。そしてあるいは、新たな始まり。

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