色欠けたちの音色紀行~ある絵本を見つけたら運命が変わりました~

柊莉音

第1章 絵本に出会うまで

1色目

「読み飽きちゃった」

 療養でいつも部屋に篭もりきり。あまり小学校に行けてないから、遊びに来てくれる友達もいない。

 家には書庫があるから、お手伝いさんと時折見に行っては気になる本を読んでいる。体調が良い日には図書館に行ったりもする。後は、塗り絵とか。

 でもそんな生活をかれこれ3年くらい続けている。誰だって飽きてしまう。

「お父様とお母様は毎日調色師の仕事で忙しくて遊んでくれないし……寂しい」

 静かすぎて耳鳴りの鳴る部屋。

 唯一鳴らないのは……



「家までどっちが早く着くか勝負だ!」

「待ってよおにいちゃん〜!」



 学校の下校と登校の時間だけ。

「いいなあ、皆元気で。羨ましい」


 私の病気は、前例の無い病気なんだって。私の爪は、生まれた時のまま透明で。

『普通の人』も生まれた時は爪が透明。だけど、大抵は3歳辺りから爪に感情の色が見えるようになる。遅くとも6歳には見えるようになるそうだけど、その年齢になっても私の爪は透明なままで。

 私の虚弱体質と関係があるんじゃないか、ってお医者さんは言っていた。でもあくまで予測で何の根拠もないんだけどね。


 ところで。感情が見えるということは、心の中が見えてしまうということ。だから、皆ネイルをしている。だから、今まで誰かに爪の秘密がバレたことはない。


 

 ……私は、知っている。■■と、体調が和らぐってことを。

 でも、こんなの誰にも言えない。言ったら最後なの、絶対に。

 だって家族にバレてからはずっと奇異の目で見られているから。



『“あんなもの”、人様の前で見せるんじゃないよ』

『部屋以外でやったら許さないから』



 きっと一生、隠しながら生きるんだと思う。

 仕方ない。

 仕方ないんだ。

 こう生まれてしまった私の、運命。

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