第13話 3日目④


 【美瑛・美瑛川】

 

 水遊びを終えて、テントを立てた後は火おこしだ。炭に火がまわり、安定してきたら、すっかり溶けた焼き鳥を網に乗せる。

 

 川で冷やしておいたビールはキンキンに冷えていた。

 

慶次「今日はサッポロクラシックで〜」


「カンパーイ!」


涼「うぅー!苦いけど、なんか慣れてきたな、ははは」

 

武「そして、やっぱ炭火は違うな!冷凍焼き鳥でも、なまら美味いぜ!」

 

 そう言いながら何度もうなずきながら頬張って、ケージも口いっぱいに肉をほおばってる。


 7時半を過ぎ、すっかり日が暮れていた。ここはキャンプ場じゃないから、まわりは本当に暗い。


 3人のランタンをつけても、届くのは自分たちの手元くらい。

でもそのぶん、夜の静けさが身体に染みる。


 半月が昇ってきて、月明かりが炭の熾火と同じくらい頼もしかった。

 

涼「月って……こんなに明るかったっけ?」


慶次「ホントに明るいな、星もスゲェ数だし」


 その時――


「ピィーーーー……ピィーーーー……」


あの鳴き声が、また聞こえてきた。

 

武「うわっ……まただよ。なんなんだよ、あれ?」


慶次「正体、わからねぇけど……マジで怖ぇな……」


涼「火、絶やさねぇようにしような。これなくなったら……暗すぎてヤバい」


 怖さを笑ってごまかしながら、オレたちは焼き鳥を追加で焼いていった。

 食べ終わるころには、腹も落ち着いて、風も心地よくなってきた。


 炭の火を保ちながら、拾ってきた枝と薪をくべ、ゆっくりと焚き火に変える。


 パチパチと時おり火の爆ぜる音がして、あとは風と川の音、そして虫の声だけが続いていた。


 オレたちは2本目のビールを開け、ハイライトに火をつけた。


涼「……今ごろ、家じゃ大騒ぎになってるよな」


慶次「うーん、オレんとこはどうだろ?まぁ“キャンプ帰りにどっかで遊んでんだろ”くらいに思ってるかもな?」


 タケシは黙っていたが、少ししてから言った。

 

武「……オレは、悪いなって思ってるよ。心配させてるのは確かだし」


 オレはうなずいて、炎を見つめたまま言った。


涼「……そうだな。明日、"青"を見つけたら……電話しよう。

 ちゃんと、“無事だよ”って。……心配かけて、ごめんって」


慶次「まぁ、そうだな」

武「そうしよう」


 短く返す2人の声が、夜の闇に消えた。


 少しの静けさが流れたあと――

 オレは口を開いた。


涼「オレさ……どうしても"青"を見つけたいんだよ……」


 火のパチパチという音だけが、言葉の間を埋める。


涼「…………後悔してんだ」


 2人はうなずくだけで、言葉はなかった。

オレは炎に視線を落とし、少し唇を噛んでから、話し始めた。


涼「本当はさ……父さん、二人で"青"を見に行こうって誘ってくれたんだ。オレが小学6年の夏に。

 でも……なんか恥ずかしくてさ。親と2人で出かけるとか、そういうの……ダセェって思って……」


慶次「わかるよ」

 


涼「オレ……断ったんだ……断っちまった」

 


 ケージが、そっと息を飲む音が聞こえた。


涼「そしたらその年の冬、父さん、急に倒れて……すい臓がんだって。

……あっという間に……本当にあっという間に………………いなくなっちまった」


武「……うん」


涼「たぶん、あの夏が最後のチャンスだったんだ。

 オレ……行けばよかったのに……あんなに楽しそうに話してくれてたのに……!」



涼「…………バカやっちまった!」


 その瞬間、抑えていたものが溢れ出し、オレは涙を流した。

 肩を震わせて、声にならない声で泣いた。


 タケシとケージは何も言わずに、そっとオレの背中をさすってくれた。


――そのとき、どこからかフクロウの声が聞こえた。


 夜の森の奥で、静かに響いていた。

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