第11話 3日目②
【中富良野町・ファーム富田】
ファーム富田を出たのは、午前10時を少し過ぎた頃だった。
ラベンダーソフトで喉を潤した3人は、なだらかな丘を越えながら、まばらな木立や畑の風景を眺めて進んでいった。
30分ほどで、美瑛の町に入る。坂道の多い町並みに、すこし脚が重くなる。
スーパーの看板が見えたとき、タケシが言った。
武「お、ちょうどいい。先にメシにしようぜ」
日差しが強くなってきて、ペダルを漕ぐたびに汗がじわりと滲んでくる。オレたちはそのまま店先に自転車を停め、冷房の効いた店内に飛び込んだ。
焼きそばパンやザンギ、おにぎりとスポーツドリンク。
そのまま、公園に移動して木陰で食べる事にした。
慶次「このザンギ、うまっ……このスーパー侮れねぇな!」
涼「ホント美味いな!……てかさ、昼ってこんなに暑かったっけ?」
武「毎日天気良くて暑いけど、今日は特に暑いな?スゲェ日焼けしてるぞリョーの鼻、真っ赤だぜ」
涼「マジかよ……確かにヒリヒリすんな」
慶次「こんな暑いなら、あとで美瑛川に入って涼めるんじゃね?」
涼「それ良いな!入ろうぜ!」
笑いながら、簡単な昼食をすませたあと、近くのコインランドリーへ。
時計を見ると、11時半を過ぎていた。
洗濯機の中で、旅の間に溜まった汗と土のついたシャツや靴下がぐるぐると回っている。回転する洗濯物を眺めながら、しばらくのんびりと時間を潰す。
武「こういうの、キャンプっていうより“暮らしてる”って感じだな」
慶次「確かに。旅っていうより生活っていうか……でも悪くねぇ」
涼「オレ、こういうのけっこう好きかも」
武「楽しいな……」
涼「ああ」
そのままオレたちはウトウトしはじめ30分ほど眠っていた。
乾燥が終わったのは12時半過ぎ。
乾いた洗濯物の香りに少しほっとしながら、オレたちはそれぞれの荷物に服を詰め直した。
そして次の目的地の銭湯へと向かう。
町の一角にあるその銭湯は、観光地の雰囲気とは少し違って、地元に根ざした空気をまとっていた。
古びた木造の建物。玄関を入ると、石鹸の香りがふんわりと漂い、青い羽の扇風機が回っていた。
番台のおばあちゃんが笑いかけてきた。
「高校生かい? 旅行かい?」
武「は、はい……まあ、そんな感じです」
高校生というには、まだ幼かったはずだが、おばあちゃんくらいになると同じようなものなのだろう。
浴室に入りシャワーを浴び、ゆっくりと湯船に沈む。
ざぶん、と肩まで浸かった瞬間、体中の疲れがほどけていくようだった。
涼「……ああ、天国だ……」
慶次「これだよな。風呂って、やっぱサイコーだわ」
武「足がジンジンしてる……疲れ、抜けるかな」
それぞれが無言で湯に浸かる時間。
旅の中で、ただ体を休めるだけの時間。けれど、それが妙に贅沢に感じた。
銭湯を出たあとは、さっきのスーパーで食材の買い出し。
夕飯の材料を買い、次のキャンプ地を目指してまたペダルを踏み出す。
空はまだ高く、午後の陽射しが地面を明るく照らしていた。
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