思い出をありがとう

奈那美

第1話

とにかく、負けず嫌いな人でした。

 

「あの人ができるなら私にもできるはず」が信念だったんじゃないかな。

私の幼稚園時代のクラスメイトのお母さんが洋裁が得意と聞いて、渋る彼女に頼みこんで習いに行ったり……これは母が四十代の時。

和服を縫ってみたいからと和裁の先生探して習いに行ったり……これは七十代。

その他に押絵を習いに行って羽子板作ったり……これは六十代後半。

まあ、好奇心旺盛と言えば聞こえはいいですがww

どこかで書いたと思いますが、私がワープロ(古っ)を普通に使いこなしているのを羨んだのか六十歳後半からワープロに手を出して、実の兄様が七十歳超えてからパソコン使うようになったと聞いて自分もパソコンに手を出して教室にも通って。

……いったい生涯でいくつの習い事に手を出していたんだろう?と今更ながら感心しています。

独身時代には生け花習ってたというし。

そうそう、一時期は菊の花を育てるのにも凝っていたな~庭に菊の棚が作ってあった記憶があるもん。

公民館かどこかで教室が開かれていたと思う。

 

そんな母が一番長く通ったのが料理教室でした。

もともと料理が下手なわけではないけれど、いろんな料理を試してみたかったのでしょう。

二週間に一度だったかな?開催される料理教室に行って、その場で班のみんなで作って食べて。

帰宅してからその日か翌日に同じ料理を自分一人で作って私たちに食べさせてくれる……そんな日々が続きました。

何年もの間、です。

 

和洋中……それこそ様々な料理が出てきました。

ちなみにそのレシピは結婚するときにコピーして婚家に持ってきています……出番はほとんどありませんが。

母親が料理熱心なのはうれしかったのです。

美味しいものが食べられるから。

でも、たまにとばっちりを喰うんです……私が。

 

その一・おせち料理

件の料理教室で、本格的なお節料理の回がありました。

煮しめや煮豆は普通ですが……松葉焼や伊達巻まで手作りすると(家にオーブンがあった)

他にも何品か面倒なものを作ったと思います。

「だから○○ちゃん、お手伝いお願いね」

お手伝い……買い物だけじゃ済まないんですよね。

はんぺんをすりばちで滑らかになるまで、そしてとき卵を入れながら

すりばちなんて滅多に使わない私には無理ゲーでした……途中で交代してもらいました。

できあがった料理たちを切って重箱に詰めるのは、さすがにちゃんとできました。

 

その二・宴会

当時、年に一~二回ほど父親が職場の人を五人ほど家に呼んで宴会をすることがありました。

今のように手軽な仕出し屋がないころです。

料理はすべて私を助手に従えた母親の手作り。

それも大皿ではなく個人個人に配るのです。

……普通の一般家庭ですよ?台所だって広くないんですよ?

煮物や茶わん蒸し、お肉焼いたのとかエビフライとかつけあわせの野菜も手作りで……私たち姉弟がめったに食べられないような料理をお皿に並べて配膳して、食べ終わった皿を回収して洗って。

お寿司……握りずしも自作でしたね。

今も百円ショップにある、俵にぎりができるケース。

あれを購入して、すし飯作って、刺身買って。

ケースにすし飯詰めてギュッと押して形作って皿に並べて、わさび乗っけて刺身のせて。

見た目はまるっきりお店の寿司です。

お酒を飲む人たちなので瓶ビールを持っていき空き瓶を回収し……。

そうやって調理されたはほぼの口に入り、私が食べたのは……焦げたのとか切れっぱしだったような。

そしておそらく母親はほとんど食べなかったと思います。

そういえば別の機会に柚子釜作る手伝いもさせられたな……このときは作る個数が少なくて助かった(汗

 

私の個人的負担が大きいものとしてはこの程度だけど、おはぎ作りだったり餃子包みだったり、瓶に入れた玄米をついたり(すぐ飽きたけど)、味噌作ったり(麹は買ってきた)、そうそうロールパンも作ってた。

そうしてあれこれ手伝わされたせい(おかげ)で、ひととおりのことは【やってみればできるんじゃね】と思う私が育っていましたww

いや、思ってるだけでできないかもですが。

 

うん……キリがないわ。

病気とか痛みとかがない世界に行ってしまって六年。

いつかそっちに行く時まで、元気(?)で待っててね。


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