悪魔の声がダンスホールに響き渡る。その声は、

深いため息と嘲りが入り混じり、まるでフロアの隅々まで染み渡るかのようだ。

「菅義偉という男が舞台を降りて、次に現れたのは岸田文雄と申しましたな。皆様は彼に、この停滞したダンスホールに新しい風を吹き込むことを期待したのでしょう？ 『聞く力』とやらを標榜し、皆様の声に耳を傾けるなどと、いかにも耳障りの良い言葉を並べました。さぞかし、期待に胸を膨らませたことでしょうな。」

悪魔は薄ら笑いを浮かべ、フロアを見渡す。

「しかし、どうでしょう？ 蓋を開けてみれば、出てくるのは『異次元の少子化対策』だの、『新しい資本主義』だの、耳触りは良いものの、具体性に欠ける言葉の羅列ばかり。まるで、新しいレコードをかけると見せかけて、結局はいつもの単調なビートを、少しばかり音量を変えて流しているだけかのようだ。皆様も、最初は期待に満ちた顔で踊っていたが、すぐにその熱は冷めていきましたな。」

彼の視線は、フロアで惰性で踊る人々へと移る。

「『賃上げ』だの『資産所得倍増』だのと、甘い言葉で皆様を誘いながらも、実際には皆様の生活は一向に楽にならない。それどころか、電気代や物価は高騰し、気がつけば、皆様の足元をすくうかのように増税の足音が聞こえてくる。『防衛増税』に『社会保障費の増大』。まるで、このダンスホールの入場料が知らぬ間に値上がりし、しかも何のサービスも向上していないようなものだ。そして、皆様は、それでもなお、文句も言わずにこのワルツを踊り続けている。」

悪魔は、少し間を置いて、皮肉めいた笑みを

浮かべた。

「そして、メディアとやらはどうでしょう？ 菅の時にはあれほど騒ぎ立てた癖に、今度はまるで、このダンスホールの薄暗い照明が自分たちの手で調整されているかのように、都合の良い部分だけを切り取って報じる。『支持率は低いが、他に代わる者がいない』などと、あたかも皆様に選択肢がないかのように言い募る。彼らは、自らがこの国の停滞に加担していることに、未だに気づいていないようだ。『安定』という名の停滞を、さも正義であるかのように喧伝し、皆様の思考停止を促している。誠に、滑稽なことですな。」

悪魔はフッと鼻で笑う。

「『政治とカネ』の問題が噴出しても、彼らはまたしても、本質的な問題を追及することなく、枝葉末節にこだわり、表面的な謝罪だけで幕引きを図ろうとする。まるで、このダンスホールの床にこぼれた飲み物を、適当に拭き取るだけで、根本的な汚れには目を向けないかのようだ。そして、皆様もまた、その茶番に付き合わされ、やがては諦めの中で踊り続ける。いつまで経っても、この『しらけ』のワルツから抜け出すことができない。」

悪魔はさらに声の調子を上げ、ホール全体に響き渡るように語った。

「そうそう、皆様の中には、あの者を『増税メガネ』などと、実に的確な渾名をつけた者もおりましたな。しかし、どうです？ その『増税メガネ』とやらが、あれほど皆様の不満を集めながらも、未だこの舞台に立ち続けているのはなぜか、考えたことはありますかな？」

悪魔は楽しげにフロアを見渡し、ニヤリと笑った。

「答えは簡単。皆様が、このダンスホールに来ないからです！ ええ、そうですとも。このホールの常連客、いわゆる『岩盤勢力』とやらが、どんなに単調なビートであろうと、誰がDJブースにいようと、律儀に踊り続ける。そして、皆様は、彼らが踊っているのを遠巻きに眺めて、『ああ、また同じ曲か』とため息をつくだけで、フロアに足を踏み入れようとしない。投票率、と申しましたか？ その投票率の低さこそが、我々悪魔の最大の喜びでございます！ 『増税メガネ』だろうが何だろうが、投票所という名のフロアに足を運ばぬ限り、彼らは何度でも当選してしまう。これほど滑稽なブラックユーモアが、この世にあるでしょうか！」

そして、悪魔はさらに声の調子を上げ、ホール全体に響き渡るように語った。

「本来、この国の未来を左右するはずの政策議論は深まらず、ただ人気取りのための言葉遊びが繰り返される。そして、皆様は、その言葉の虚飾に踊らされ、またしても貴重な機会を失っていく。自ら可能性の芽を摘んでおきながら、後になって『あの時こうしていれば』などと嘯く。誠に、残念なことです。皆様が自ら招いた結末に、我々悪魔はただ、慇懃無礼に笑うばかりでございます。」

その一言が、ホール全体に、妙な、そして不気味な笑いを誘った。人々は、その言葉の意味を深く考えず、ただ漠然とした同調の笑いを浮かべる。彼らは、自分たちが悪魔の掌の上で踊らされていることに、まだ気づいていない。

フロアには、相変わらず沈鬱なワルツが響き渡る。人々の足音は、以前にも増して重く、

そして疲弊しきった音を奏でているかの

ようであった。彼らは、悪魔の言葉が

突きつけた真実から目を背け、ただ目の前の、

しかし決して満たされることのない日常の

ダンスを続けている。

DJブースから悪魔の声が再び響く。その声には、

諦めにも似た響きが混じっていた。

「皆様は、この白昼夢からいつお目覚めになるのでしょうか？ それとも、このまま永遠に、心地よい幻影の中で朽ち果てていくおつもりでしょうかね。岸田政権という名のこのワルツは、いつまで続くのか。そして、その先に、皆様は本当に望む未来があるのか。我々悪魔は、ただ見守るばかりです。」

この悪魔の嘲笑は、あなたに何を問いかけますか？

それでも選挙に行かなくて大いに結構、

自民党が続けば外国にばらまいて

日本人は貧しくなるばかり。