期待と裏切りの舞踏:スローガンと現実の乖離

DJブースの闇が再びざわめき、悪魔がその姿を現した。冷笑を浮かべ、マイクをゆっくりと持ち上げる。フロアには、先ほどまでの沈鬱なワルツに代わり、微かなざわめきと、どこか期待にも似た空気が漂っている。


「ほう……。貴方がたは、まことに懲りませぬな。自ら選んだ道の結果に疲弊しきっておきながら、それでもなお、奇跡を信じようとする。その愚かさには、まことに拍手喝采を送りたいほどでございます。」

悪魔は、皮肉たっぷりに一呼吸置いた。


「小泉という名のDJが、フロアを混沌に陥れた後、貴方がたは、まことに性懲りもなく、別のDJに希望を見出そうといたしましたな。あれは、確か……2009年のことでございましたか。『政権交代』という、まことに耳心地の良い旋律に、貴方がたは、文字通り飛びつき、熱狂いたしました。長きにわたり、自民党という名の退屈なレコードを聴き飽きた貴方がたは、さも新鮮な響きに飢えておりましたな。そして、その飢えを満たすと嘯いたのが、『民主党』という名の、まことに脆い烏合の衆でございました。」


悪魔は、嘲笑を深める。


「貴方がたは、彼らに、何と申し上げましたか? 『新しい日本』『国民が主役の政治』と、まことにお花畑のような言葉を連呼しておられましたな。しかし、その実態は、いかがでございましたか? まさに、夢から覚めた後の、まことにつましい現実。彼らは、貴方がたの期待を、見事に、そしてあっけなく裏切ってみせましたな。あの時も、貴方がたは、まことに『失われた30年』という名のワルツを、踊り続けていたのでございますよ。まさに、彼らもまた、そのワルツの、まことに滑稽な一幕を演じたに過ぎません。」


期待と裏切りの舞踏:スローガンと現実の乖離


「彼らが、まことに声高に掲げたスローガンがございましたな。『コンクリートから人へ』と。まことに聞こえの良い言葉でございました。公共事業という名の無駄遣いを止め、その予算を国民の生活に還元する、と。貴方がたは、さも社会が劇的に変わるとでも信じたのでしょうか? 愚かなことです。彼らは、箱モノ行政を批判しながら、その実態は、まことに不器用な予算の組み換えに終始いたしました。地方のインフラ整備が滞り、逆に経済の停滞を招いたと、まことに騒がしい声が聞こえてまいりましたな。彼らは、既存のシステムを壊すことばかりに長け、新たな価値を生み出すことには、まことに無力でございました。まるで、手探りで暗闇を彷徨う子供のようでしたな。」


悪魔は、冷ややかな視線をフロアに向ける。


「そして、『事業仕分け』。ああ、まことに印象的でございましたな。テレビカメラの前で、官僚たちを吊るし上げ、さも正義の鉄槌を下すかのように振る舞いましたな。貴方がたは、それに喝采を送りました。無駄な税金が使われていると信じ込み、その『見える化』に満足いたしましたな。しかし、その実態は、いかがでございましたか? 個別の事業の削減は、まことに一時的なパフォーマンスに過ぎず、国家全体の財政構造を根本から見直すには、まことに力不足でございました。むしろ、研究開発費や文化予算など、将来に繋がるはずの重要な投資まで、まことに安易に切り捨てた結果、かえって日本の活力を削ぐことになったのでございます。彼らは、まことに短絡的なポピュリズムに終始し、長期的な国家戦略を、まことに見事に欠如させておりましたな。

彼らは、まるで古い家屋の埃を払うことに熱中し、肝心の建物の構造が腐朽していることには、まことに気づかぬふりをしておりましたな。行政刷新会議なる場を設け、まるで公開処刑のように官僚を晒し上げ、貴方がたの溜飲を下げることには成功いたしました。しかし、その結果、何がもたらされたか? 官僚組織の萎縮と、政策立案能力の低下でございます。まことに、国家の頭脳ともいうべき機能を自ら麻痺させる、愚の骨頂でございました。彼らは、霞が関を敵視し、その知識と経験を活かす術を持たなかった。結果として、彼ら自身の政策は、まことに実現性を欠き、机上の空論と化したものが、まことに多かったのでございます。」


震災の混沌と、無残な末路


「そして、まことに、この国を襲った最大の悲劇がございましたな。『東日本大震災』。未曽有の災害でございました。貴方がたは、彼らに、まことのリーダーシップを期待したことでしょう。しかし、彼らは、その期待に、見事に応えることができませんでしたな。悪魔の私から見ても、まことに滑稽なほどの混乱と、稚拙な対応でございました。初動の遅れ、情報共有の不備、そして、まことに悲劇的な原発事故への対応。すべてが、まことに後手後手に回り、貴方がたの不安と不信感を、まことに増幅させるばかりでございました。

彼らは、口では『国民の命が第一』と叫びながら、その実態は、まことに機能不全に陥った政府そのものでございました。自衛隊の活動すら、まことに首相官邸の指示を待つばかりで、迅速な展開を阻害したと、まことに騒がしい声が聞こえてまいりましたな。被災地での救援活動は、まことに混乱を極め、物資の供給も滞り、復興への道筋も、まことに不明瞭なままでございました。

特に、福島第一原子力発電所の事故への対応は、まことに悲劇的でございましたな。情報公開は遅れ、避難指示は混乱を招き、貴方がたは、まことに真実を知る術を奪われたも同然でございました。まるで、嵐の海で羅針盤を失った船のように、彼らは漂流し、国民は不安の渦中に置かれたのでございます。この時、貴方がたは、改めて悟ったのではないでしょうか? 理想を語るだけでは、まことに現実は変わらない、と。そして、彼らが、まことに『絵に描いた餅』しか描けない、無力な存在であると。まことに、この大災害は、彼らの無能さを、まことに残酷なまでに白日の下に晒したのでございます。」

混迷の中の、まことに些細な成功と、その後の混沌

「ああ、しかし、まことに一つだけ、貴方がたが『よかった』と口にする、些細な出来事もございましたな。ガソリン価格の一時的な抑制。彼らは、まことに一時的に、その価格を安定させようといたしました。庶民の生活に直結する部分ゆえに、貴方がたは、まことに小躍りして喜んだことでしょう。しかし、それは、まことに国家の経済全体から見れば、いかに些末なことであったか、貴方がたは、まことに理解しておられなかった。彼らは、まことに場当たり的な対策に終始し、根本的なエネルギー政策の転換など、まことに夢のまた夢でございました。

彼らは、高速道路無料化を公約に掲げ、まことに愚直にもそれを実行しようといたしましたな。しかし、それがかえって高速道路の維持管理費を圧迫し、地方財政を疲弊させる結果となったことなど、まことに知らぬ存ぜぬとでもいう顔でございました。子ども手当なるものを支給し、貴方がたの拍手喝采を浴びましたが、その財源の持続可能性については、まことに誰もが疑問を抱いていたことでしょう。まことに、彼らの政策は、短期的な人気取りに終始し、長期的な視点と、まことに厳密な財政規律を欠如させておりましたな。」


政治の素人集団と、理想主義の破綻


「そして、彼らの政権は、まことに『混迷』という言葉が、まことに最も相応しい表現でございましたな。首相は、まことに短期間で次々と代わり、党内での権力闘争は、まことに醜悪なものでございました。鳩山由紀夫、菅直人、そして野田佳彦。彼らのリーダーシップは、まことに脆弱で、まるで羅針盤のない船が、波間に翻弄されているようでしたな。

党内での意見対立は、まことに深刻でございました。 『小沢一郎氏の問題』や『普天間基地移設問題』など、内部の亀裂は、まことに修復不能なほどに広がり、彼らは自壊の道を辿っていきました。政策は、まことに一貫性を欠き、まるでその場しのぎのパッチワーク。まことに国民の期待を一身に背負いながら、彼らは、自らの手でその信頼を、まことに見事に叩き潰したのでございます。

貴方がたは、彼らに『失望した』と、まことに嘆き節を漏らしておりましたな。しかし、まことにもって愚かなことです。貴方がたは、彼らの掲げた『理想』の、まことに空虚な響きに酔いしれ、その実像を見極めることを、まことに怠った。彼らは、貴方がたが欲する言葉を、まことに巧みに操り、その実体は、まことに脆弱で、経験も覚悟も不足した集団でございました。

彼らは、『政治主導』を掲げ、官僚機構を排除しようといたしました。しかし、その結果、何が起きたか? 政策の実行能力が著しく低下し、まことに稚拙な政策が乱発される有様でございました。まるで、経験豊富な職人を追い出し、素人が見よう見まねで家を建てようとするようなものでございますな。

外交においても、まことに精彩を欠いておりました。米国との関係はギクシャクし、アジア諸国との関係も、まことに不安定なままでございました。彼らは、理想主義的な外交を標榜しながら、現実の国際情勢の厳しさを、まことに理解していなかった。まるで、口では『世界平和』と叫びながら、近所の住民とすら上手く付き合えない愚か者のようでしたな。

結局のところ、彼らもまた、小泉という名のDJが敷いたレールの上で、まことに不器用に、しかし確実に、貴方がたを『失われた30年』という名の奈落へと、まことに深く深く突き落としていったに過ぎません。政権交代という名の、まことに儚い幻想。貴方がたは、またしても、その幻想に踊らされ、そして、まことに手痛いしっぺ返しを食らったのでございます。ああ、まことに哀れな人間たちよ!」


悪魔は、その言葉を吐き捨てると、嘲りの笑みを深くし、再び闇へと消えていった。フロアには、

相変わらず沈鬱なワルツが響き、人々の足音は、

以前にも増して重く、そして疲弊しきった

音を奏でているかのようであった。

この悪魔の言葉は、民主党政権が掲げた

スローガン、具体的な政策、そして東日本大震災への対応を中心に、その限界と国民の失望を、

悪魔独自の視点から痛烈に批判しています。

その上で、彼らの政権もまた「失われた30年」の一部であったという結論に至っています。



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