「構造改革」という名の幻想と、深まる格差
悪魔は再びDJブースの暗闇から現れ、マイクを手に取ると、その冷酷な笑みを一段と深くしました。
「さあ、貴方がたは、またしても、まことにつかの間の希望に、見事に踊らされるのでございますな。2000年代の半ば、フロアに、いかにも景気の良い音楽が響き渡りましたな。『改革なくして成長なし』と。小泉という名のDJが、声高に「構造改革」を叫び、貴方がたはそれに熱狂いたしました。中でも、「郵政民営化」などという、まことに大それた、しかし実態の伴わない変革に、熱狂的に拍手を送りましたな。あれは、国営事業を民間へ移管すれば、さも効率化が図られ、経済が活性化するかのような、まことに都合の良い幻想でございました。
しかし、その実態は、どうでしょう? 貴方がたは、かつて全国津々浦々まで張り巡らされていた、金融インフラとしての郵便局ネットワークを、ただの営利企業に変えてしまったに過ぎません。その結果、地方の過疎地域では金融サービスが縮小され、高齢者をはじめとする多くの人々が、まことに行き場を失うことになったのでございます。郵貯マネーという、国家が管理すべき巨大な資金は、民間の論理によって、よりリスクの高い投資に晒されることとなり、貴方がたの老後の生活基盤を揺るがす、まことに危険な賭けに出たのでございます。これは『改革』などではなく、単なる「切り売り」に過ぎませんでしたな。貴方がたは、目先の数字に惑わされ、長期的な視野を完全に失っていたのです!」
悪魔の声が、フロアにこだまします。その目は、人々を嘲るかのように細められます。
「そして、その『構造改革』という名の元、貴方がたは、労働市場に、まことにもう一つの爆弾を仕掛けましたな。「派遣労働」という名の、不安定な働き方を、何の躊躇もなく拡大させたのでございます。企業は、人件費削減という、まことに短絡的な目的のために、正社員の雇用を減らし、より安価で都合の良い派遣労働へと切り替えていきました。
貴方がたは、一時的に「時給が高いから」などと、まことに愚かな理由で、自ら進んで派遣労働の道を選んだ若者たちも、少なくありませんでしたな。
特に、就職氷河期と呼ばれる、まことに不運な時代に、正規雇用の機会を奪われた者たち。彼らは、その日暮らしの賃金に満足し、将来への不安を、あえて見ないふりをしておりましたな。まるで、目の前の甘い毒餌に飛びつく、愚かな魚のようでした。
しかし、その実態は、どうでしょう? 派遣労働は、貴方がたから長期的なキャリア形成の機会を奪い、安定した収入と社会保障を奪い去りました。企業は、貴方がたを都合の良い『コスト』と見なし、経済状況が悪化すれば、何の躊躇もなく切り捨てたのでございます。貴方がたは、まるで使い捨ての部品のように扱われ、その生活は、常に不安定な綱渡り状態となりました。これにより、貴方がたの社会は、正規雇用と非正規雇用の間で、まことに深い亀裂が入り、格差は拡大の一途を辿ったのでございます。これは『改革』などではなく、『社会の破壊』でございましたな!」
消費税と消えた法人税、
そして「見えざる富の移動」
悪魔は、ゆっくりと話し始めます。その声は、かつてないほど冷たく、そして皮肉に満ちています。
「貴方がたの政府は、自らの財政規律という名の欺瞞のために、まことに奇妙な策を講じましたな。それは、消費税の増税と、法人税の減税でございます。消費税は、貴方がた愚かな一般市民が、日々の生活で支払うたびに、その負担がのしかかるという、まことに公平に見えて不公平な税制でございます。貧しい者も富める者も、同じ割合で消費税を支払う。まことに、弱者から搾取するに、これほど都合の良い税などございません。
そして、その集められた消費税の一部は、まことに皮肉なことに、「輸出還付金」という形で、輸出企業へと還流されていきましたな。貴方がたが国内で消費税を支払えば支払うほど、大企業の利益が増えるという、まことに巧妙な仕組みでございました。貴方がたは、自らの手で、大企業を潤すための資金を、せっせと提供していたのでございます。
その事実を、貴方がたはほとんど知ろうとしませんでしたな。
その一方で、法人税は、まことに巧妙に引き下げられました。企業は、その減税の恩恵を受け、
利益をさらに積み上げることができました。
しかし、その利益が、貴方がたの賃金や、未来への投資に、まことに積極的に回されることはございませんでした。彼らは、ため込んだ内部留保を、ただ増やし続けるばかり。まるで、金庫番が、ただひたすら金を数えているようなものでございましたな。
貴方がたは、政府が『経済の活性化のため』と謳う、まことに甘い言葉に騙され、自ら進んで富の再分配の逆流を許したのです。消費税という名の重い足枷を自らに課し、大企業はさらに強固な足場を築く。まことに、見事なまでの「自己犠牲」でございましたな。貴方がたは、自らの首を絞めながら、それを『経済成長のためだ』と信じ込まされていました。まさに、愚かな羊が、自ら屠殺場へと向かうようなものでございますな!」
氷河期世代の「無関心」と、
自らの首を絞めた愚行
悪魔は、フロアを見渡しながら、ため息をつきました。しかし、その表情には、深い憐憫ではなく、ただひたすらな嘲りだけが浮かんでいます。
「そして、まことに滑稽なのは、貴方がた「氷河期世代」でございますな。新卒一括採用という、まことに古めかしい慣習が崩壊し、正規雇用の門が閉ざされた時代に、貴方がたは放り出されました。本来であれば、その不条理に怒り、社会構造そのものに疑問を投げかけ、変革を求めるべきでございました。しかし、どうでしょう? 貴方がたは、まことに都合の良い言い訳を並べましたな。『どうせ何をやっても無駄だ』『誰がやっても変わらない』と。そして、その最も明確な行動、すなわち選挙に、足が向くことはほとんどございませんでしたな。
貴方がたは、自らの手で、この国の未来を決定する権利を放棄したのでございます。自民党の悪事、すなわち貴方がたの生活を蝕み、社会の仕組みを歪め、そして格差を広げ続けた政策の数々を、貴方がたは、その責任を問うことなく、ただ放置したのでございます。まるで、目の前で毒が撒かれているのに、それを止める術を知りながら、何もしようとしない愚かな民のようでしたな。
考えてもごらんなさい。もし、貴方がたの世代が、その不満を、怒りを、そして未来への希望を、一票に託して結集させていれば、この国の政治は、まことに大きく動いていたかもしれません。しかし、貴方がたは、その力を自ら放棄し、ただ現状維持に甘んじ、その結果、さらに深い停滞へと自らを追い込んだ。これは、「無関心」という名の「自己破壊」でございましたな。
貴方がたは、『どうせ無駄だ』と諦めることで、自らの未来だけでなく、後に続く世代の可能性までも奪い去ったのです。政治が、まことに貴方がたの生活に直結しているという、その自明の理に、なぜ気づこうとしなかったのでしょう? まことに、見ているだけで、心底から吐き気がするほどの、愚行でございました!」
悪魔は、その言葉を吐き捨てると、嘲りの笑みを残し、再び闇へと消えていきました。フロアには、相変わらず沈鬱なワルツが響き、人々の足音だけが重く、そして疲弊しきった音を奏でています。
本当に愚かな者ほど見栄をはりたがるものですな。
ITバブルの頃なら移民を受け入れて税金をITに投入すれば生産価値も上がってGDPが2位を維持できていたでしょうにね。
貴方は、この悪魔の言葉から、何を学びますか? そして、この国の未来に、光をもたらすことができると信じますか?
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