第21話 さようなら、伯爵。

 ・・・コメットで旗艦を沈めてから何時間かたった。

 帝国海軍の船は軒並み撃沈されるか投降するかして戦闘は終わったようだ。

 数隻の船は逃げ出したけれど、スフィア軍の大勝利と言っていい戦果だろう。

 俺は乗ってたベレシート号がシャカラの船に突き刺さった状態で身動きが取れなくなっているけれど、戦闘を終えた船がこちらに向かってきてくれているのでなんとかなりそうだ。


 そんな事を考えながら艦橋内に視線を戻すと、丸い肉団子のように身体をボキボキにおられて丸められたシャカラが泣いていた。


「・・・シテ、コロシテ・・・」


「―――さぁここで回復薬をぶっかけて全回復、もう一回逝ってみよー♪もう一回拷問出来あそべるドン!」


「ァァァァァァァァ!!」


 リンナがシャカラに回復薬をじゃぶじゃぶとぶっかけて傷を回復させ、当初の『片腕がなく顔の焼けただれた状態』に戻されたシャカラの身体を、リンナが喜々としてまた破壊していく。


「こういうのにはコツがあって、魔法とかを使わずに純粋に物理的な力だけで身体を損壊すると回復薬の効果で回復しやすいんですよね、元の形にもどすだけなので。

 何度でも拷問出来あそべるように壊すのが極上です」


「グギッ、ギャッ、ひぎぃ、ヴァッ、ギィィィィッ!!」


 リズミカルに指の関節を一つずつへし折られるシャカラが短い悲鳴をあげながらこちらを睨んでいる。そういえばシャカラに言っていなかったことがあったな、と思い出したのでついでに教えておいてやることにする。


「あ、そうだシャカラ。言い忘れていたけれどお前の一族処刑されてっから。

 お前の家族は全員殺されて今王都の処刑場でさらし首になってるし、お前の派閥の貴族は全員爵位没収済み、お前の従兄弟や従姉妹やその家族といった伯爵家に血が繋がってる連中は赤子や幼子まで等しく処刑されたよ。シャカラの血統は完全に根絶させられてるからね」


「・・・えっ?えっ??」


 俺の言葉に心底驚いた様子で目を白黒させるシャカラ。衝撃のあまり悲鳴を上げるのも忘れてしまっているけれど、何を驚くことがあるんだろう。


「そりゃそうだろ。外患誘致からの売国だぞ?残った一族がどうなるかなんて決まってるじゃん。

 おまけに機密情報を盗んで他国に売り渡して戦争を起こしたんだ、これだけやらかせば国王陛下だってノーチャンスなのはお前にだってわかるだろ??リンナの拷問でお前が持ち出した情報の事とかヴァンの事とか色々と聞きだせたけど、最後は一応回復させた状態で陛下にお渡しする最後のとどめは国王陛下にお任せすることになるから。お前はきちんと国民の間で首を落とされないといけないからな!!」


「・・・い、いやだ。いやだ、死にたくない!なぁお願いだシーン、いやシーン様!お願いします!どうか国王陛下に口を聞いてください!

 陛下や大将軍に気に入られている貴方様が私の助命を嘆願してくださればあるいは・・・!奴隷になります・・・!タリアを寝取った無礼を謝罪します、ケツも差し出します、クソを喰えといわれたら喰います、、許してくださいなんでもしますから!!」


「ん?今なんでもするって・・・いや、なんでもありません」


 リンナが何か口をはさみかけたけど途中で辞めていた。

 ・・・これは領地の魔物を討伐した後の時の嫌々したドゥ・ゲザとは違う、本気の命乞い、地面にひれ伏し泣きながら何度も額を地面にぶつけるようにして頭を下げての必死の懇願。だがしかし―――


「・・・あのさぁ。もうそういう次元の話じゃねーんだよ。お前は国賊、いや売国奴なわけ。だからお前はもう死ぬしかないんだ、陛下や国民が見守る前で断頭台で首を落とされてな」


 俺の言葉に絶望し、呆然自失と言った様子で絶句するシャカラ。


「ありゃりゃ、反応無くなっちゃいましたね。それじゃラスト全回復させて連れ帰りますか」


「そうだな。提督にお礼も言わなきゃいけないしコメットも労ってやらないとな」


 ―――結果でいえば、帝国とスフィア・ブライド連合軍の海戦は大勝利となった。


 ソネルン提督は瀕死の重傷を負っていて、戦闘終了後には回復薬を詰めた樽のなかに詰められていた。こうしておけばひとまず死ぬことは無いので帰国したら治療院に運んで他の負傷者と一緒に手当てをするとの事だった。提督には改めてお礼を言うとしよう。

 今回の殊勲賞のコメットは、おもいきり褒めて撫でまわして労った。

 リンナの事も労ったけれど、良い運動になったし楽しかったからオッケーですと満足していた。この娘はブレないし好きにさせておくのが一番なので本人が満足してるならそれで良しとしよう。


 国に戻った俺はシャカラから聞いた情報を国王陛下にもお伝えしてから、王国で代々処刑人を務める女史にシャカラを引き渡した。ギロチン処刑人の証である鈴をつけたまだ美女で、騎士学校の後輩になる。学生の頃に行事で何度か関わった事があったな。


「私はジトジトと苦しめるようなやり方は嫌いでね、伯爵」


 猿ぐつわをされて縛られたシャカラを受け取り、乗馬用の鞭を鳴らす処刑人。後は彼女が陛下の下でシャカラを裁いてくれるだろう。

 シャカラが泣きながら助けを求める視線を送って唸っていたけれど猿ぐつわで聞こえないし、お前は死ぬしかないやつなんで自分の行いを悔い改めて死んでくれ。


 ―――こうして、俺はいつも通りの日常に戻って来た。

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