第18話 殺意マシマシでいこう
「・・・ギュアウ!ギャギャウ!!」
コメットの言葉に我に返ると、敵軍がこちらにむかって投石機を向けていた。コメットにも有効な魔力石の投石を狙っているのか!判断が早い、やるなリーボック。
ここでヴァンやシャカラ達を始末できないのは心残りだけれど、このままここにいてはコメットが狙い撃ちにされてしまう。悔しいけど手綱を引いてその場を後にし、自陣の方へと退避を促す。
「ワーハハハハ!見ろぉタリア、あのシーンが尻尾を巻いて逃げていくぞぉ!俺に散々迷惑をかけた罰だぁ、覚えていろよ負け犬めぇ!」
転進する俺を見て、隊列を離れてシャカラ伯爵が左手で俺を指さしながらゲラゲラと笑いながら絶叫している。クソッ、どこまでも不快な野郎だな!
しかし俺への罵詈雑言を聞き逃すようなコメットでもなかった。
「ドゥルルルル、グルァッ!!」
「あぴゃっ!?・・・ゆんやぁぁぁぁぁぁっ!あぢゅぅぅぅぅいよぉぉぉぉ?!」
首だけで肩越しに振り返り、シャカラと黒鎧の男の間に距離があるのを確認しながらこちらを指さすシャカラ伯爵を掠める狙い火球を放った。黒鎧の男が気づいてカバーに入ろうとするけれど、もう遅い。
ドジュウという音とともにコメットのブレスがシャカラの近くを掠めて、俺たちを指さしていたシャカラ腕の左腕が溶解し、ついでに余波で顔の左半分も焼け爛れていた。シャカラ伯爵は、一瞬後に自分の片腕が失われたことと焼かれた激痛に鼻水を垂らしながら落馬し、泣き叫ぶ。
「おんぎゃああっ、腕、腕!うでがぁっ、おれのうでがないのぜーっ?!ああああ魔力で焼かれてこれじゃ再生魔法も効かない?!俺の腕、返してくれよぉぉぉっ」
「掠めただけで?!くそっ、そこで泣きわめいているマヌケを抱えろ“追跡者”!」
悲鳴をあげてのたうちまわるシャカラをみたヴァンが黒鎧の男に指示を出し、男が落馬したシャカラ伯爵を傍に抱え上げ、去っていく。
「グルゥ♪」
一応の意趣返しが出来た事にコメットがご機嫌に喉をならしているけれど、今のは俺の痛恨のミスだ。親の仇と急に言われて、思考が停止してしまった。俺もまだまだ未熟だな・・・!!
―――結局、帝国軍はヴァン達の動きに合わせて兵を動かして戦闘を切り上げると鮮やかな手並みで撤退していった。
帝国軍が撤退した後、オーギュスト将軍に自分の失態と共に報告するもそもそも帝国の意図が読めない侵攻だったので失態も何もないというのが将軍の感想だった。
俺が索敵・遭遇した際の出来事からヴァン達を亡命させるためだったのかもしれないという考えに至ったようだったけれど、ヴァン達を迎え入れた帝国の今後の動きが気になるので今後も国境の警戒は強めるとの事だった。
そして戦地から帰った俺はヴァンを戦場で見つけたしてと呼び出した。一応、キリコやリンナ、それと当たり前のように泊まりに来ているクリム姫が見守る中で戦場でヴァンに出会ったこと、そして自分が俺の父親を殺したと言ってきた事を伝えると、辛そうにしながらゴウが語り始める。
「・・・今まで黙っていてごめん。
全部話すよ。・・・ヴァン・ノッド・ライバーは、俺達の親父は天才的な魔法技術の研究者だった。けれど人間としてはどうしようもないクズ野郎で、母さんが病気で死んだ際に俺や姉さんを捨てるために自分も死んだと偽装して俺達姉弟を捨ててとんずらこいてやがったんだ」
うわぁ親の風上にも置けないクズじゃん、流石にリンナもびっくりしている。
「きっかけは成人する少し前位の事、街に行った時にあのゴミ親父によく似た男を見かけた事だった。アイツが生きているかもしれない、そう思ったおれは成人を機にこの屋敷を出て、あのクズを捜していたんだ。
だけどあいつは転々と居場所を変えるので中々捕まえる事が出来なかった。
奴が自分の才能と技術をそそいだ“黄金の鎧”を完成させようとしているという所までは情報を掴んでいたんだけれど・・・。
そんな中で奴は、研究資金が尽きた事で先代のトルマリン卿に金を無心しにきていたみたいなんだ。
キリコ姉さんの給金分を寄越すか、売却費用として金を寄越せとたかったらしい。先代トルマリン卿はそんなクソ親父に激怒して、自分で子供達を捨てておいて後からモノ扱いして金を寄越せとは親の風上にも置けない恥だと相手にせず、俺やキリコ姉さんは我が子も同然としてあの生ゴミ親父を一蹴したんだ」
キリコも驚いているので初耳なんだろう。俺が従軍している時にそんな事があったのか、親父も言う時はしっかり言うタイプのおっさんだったからなぁ、まぁそうなるな。
「だがそれが逆に俺の親父の逆鱗に触れた!」
歯噛みし、ブルブルと怒りに震えながら堪えるように言葉を吐き出すゴウ。
「あの生ごみは、生きる不良債権野郎は、研究の過程で生成した毒を親父さん達に盛って・・・病気で死んだように偽装して、毒殺したんだ・・・!!」
怒りと悔しさにボロボロと泣き始めた。その剥き出しの感情が、ゴウがしっかりと裏付けを取った事実なのだという事を証明している。
「そうか、そうだったのか・・・」
「・・・あのゴミ親父の罪は奴を捕まえられなかった俺の罪。本当はシーン兄さんや姉さんに知られる前に相打ちになってでも始末するつもりだったんだけど・・・すまねえ!!」
そういってガバッと地面に伏せ、見事なドゥ・ゲザの体勢を取るゴウ。
「黙っていた事も、勝手していたことも全部俺の所為だ!責任は全部俺にある、だから責めるなら俺を責めてくれ!姉ちゃんは何も知らなかったんだ」
なきながら四つん這いになるゴウを見てから静かに目を伏せ、その傍に歩いてから膝を落す。
「―――キリコやお前の親父のヴァンが俺の親父を殺した事について、キリコやお前が気にすることは無い。“それはそれ”、“これはこれ”、だ!!」
「・・・シーン兄さん」
「俺がゴウに対して怒るべきところがあると知れば、最初から俺に話をしてくれなかったって事についてだな。子供のころから一緒だったんだぞ?一人で悩まないで相談してほしかったって思う。俺が不満なのはそこだけだよ」
「うっ、・・・ううっ、シーン兄さん・・!!」
膝をつき涙を流すゴウの背中をゆっくりとさすってやる。
「やっつけようぜ、あいつを」
「・・・うん」
「ボコって生き地獄合わせてさ、落とし前つけさせてやろーぜ、皆で力を合わせてさ」
「・・・うんっ!」
「これからは何でも一人で背負い込もうとするなよ。約束だぞ」
「・・・うんっ!!」
子供のように泣きじゃくるゴウを落ち着かせるようにしてゆっくりと抱きしめる。1人で無茶しようとするのは変わらない、いつになっても手のかかる弟分である。
「見なよ・・・私のご主人様を」
「
なぜか超満足げに胸を張るリンナと、滅茶苦茶テンションあがっているクリム姫については見なかったことにしよう。
ゴウの会話と俺のやり取りを静観していたキリコは、ほっとそのばちくそデカい着痩せする胸をなでおろしているようだった。
・・・キリコもゴウも俺にとっちゃとっくに家族なんだ。そんな気持ちを乗せてキリコに微笑み返すのだった――――と和やかなになったところで荒々しく扉が開かれて、早馬で飛んできた伝令が駆け込んできた。
「――――トルマリン卿、隣国から救援があり陛下から緊急の招集です!
帝国海軍が、隣国に海上ルートから侵攻してきたようです!!しかもその先陣には裏切り者のシャカラもいるようです!!」
「よっしゃブチ殺し確定だなシーン兄さん!!!!!」
「おう!あの馬鹿、今度こそ地獄に叩き込んでやるぜっ!!」
「ヒャッハー!私も行っていいですかご主人様!!今度こそ確実に惨殺ですよ!!」
「ぎゃうぎゃうぎゃうー!!」
「家の事は任せてどうぞいってらしてくださいご武運を」
「すぐに私専用の御座船用意させますわ!かわせーって叫んだら大体何でもかわしてくれる操舵士が舵を握っていましてよ!!!」
・・・切り替えが早いのはうちの一家のいいところだと思うよ!!!!!!!!あと姫様うちの芸風に馴染むのはやすぎなんですねー!!!!!!!!
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